[II-P05-2-02] 胎児期からの肺静脈狭窄が動脈管退縮により改善した総肺静脈還流異常症Ⅰa型の一例
キーワード:総肺臓脈還流異常症, 肺静脈狭窄, 低出生体重児
【背景】総肺静脈還流異常症(TAPVC)は新生児期に外科手術を要する疾患であり、肺静脈狭窄(PVO)を伴う場合は緊急手術が必要となる。また、早期手術介入や手術時低体重は予後不良因子とする報告もある。今回、我々は胎児期にPVOを認め、緊急手術が必要と予測したが、生後、動脈管の退縮に伴いPVOが改善した子宮内発育不全(FGR)を伴うTAPVCの一例を経験した。【症例】妊娠31週5日に近医産科よりFGR(-2.7SD)および単一臍帯動脈で紹介。当院で行った胎児エコーでTAPVC(Ia)と診断。垂直静脈で70cm/sと加速あり、PVOを認めた。胎児の推定体重は1194gであり、開心術は困難と判断し、妊娠32週1日より入院管理を行い、安静加療とした。PVOの所見は続き、推定体重が2kgを超えたため、緊急手術に備え帝王切開の方針とした。妊娠38週5日に選択的帝王切開にて1926gで出生。生後、陥没呼吸を認め、胸部X線で軽度肺うっ血を認めた。心エコーで垂直静脈に2.5m/sと加速があり、PVOを認めた。同日の造影CTにて、垂直静脈の狭窄の原因は、左肺動脈と動脈管による圧迫と判明。動脈管退縮による改善を期待し、緊急手術を行わず経過観察とした。その後、動脈管退縮に伴い、狭窄部位の血流速度の低下を認め、陥没呼吸・肺うっ血の改善を認めたため、待機的に、体重3056g、日齢51にTAPVC repairを施行し、術後24日目に退院。以後、肺静脈狭窄なく経過良好。【考察】TAPVC(Ia)における術前PVOの原因の一つに、周囲からの圧迫があり、左肺動脈と左主気管支による圧迫が知られている。動脈管の圧迫によるPVOはまれであり、動脈管による圧迫であれば、自験例のごとく退縮による狭窄所見の改善が期待できる。PVOをきたしている症例では、原因によっては生後に改善し緊急手術を回避できる可能性もあり、周囲との関係を正確に診断することが重要である。