第60回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

多領域パネルディスカッション

多領域パネルディスカッション1(II-TRP1)
先天性心疾患の子どもと家族に病気や治療をどのように説明するか

2024年7月12日(金) 09:40 〜 11:10 第5会場 (4F 413+414)

座長:城戸 貴史(静岡県立こども病院 地域医療連携室)
座長:水野 芳子(東京情報大学)

[II-TRP1-4] 患者さん・ご家族への説明:ある心臓血管外科医の視点から

河田 政明1,2,3 (1.自治医科大学さいたま医療センター 成人先天性心疾患外来(循環器内科/心臓血管外科) , 2.さいたま赤十字病院 成人先天性心疾患外来(循環器内科/心臓血管外科) , 3.(前 自治医科大学とちぎ子ども医療センター・成人先天性心疾患センター 小児・先天性心臓血管外科))

心臓外科医として、手術に先立ち、あるいは術後経過中に患者さん、ご家族(両親)にさまざまな説明を行う機会は満足度の高い手術のために、手術を行うことと同様に重要である。 手術の説明は術者自身が両親を中心に行い、原則複数名に行う。小学生以上では本人・両親の希望を聞き、本人にも同時に、あるいは別個に概略の説明を行う。手術に向けて行う説明も経験値の増加、自分の立場の変化に伴って変化した。初期には手術の内容、手順や合併症が中心であったが、部門責任者となり、さまざまな決定をし、責任を負う立場になって、手術の必要性の背景、患者の個別性にも配慮しながら、対象疾患の問題点や術後に影響する循環・呼吸生理、「人工心肺の病態生理」や「非生理的側面」や「不確実性」などの比重が大きくなった。さらに、平成20(2008)年の本学会シンポジウム(第44回、中澤 誠会長、郡山)で、「患者さんの立場から」の講演の中で「「大丈夫ですよ、安心して下さい」の言葉、「勇気づける」言葉だけで充分」と聞いて「チームで全力・最善を尽くします」(小児科などの診断、管理を引き継いで)あるいは「手術室やPICU、病棟看護師や臨床工学技士、薬剤師なども一緒です」、さらには「他科・他領域・他職種・両親/家族へのリスペクトの上に外科医の治療が存在する」ことへの言及が不可欠となった。さらに手術、術後急性期だけでなく退院後や遠隔期についても触れるようになった。どんな手術も「根治」ではないこと、病気と上手に付き合うこと、「自立/自律」を目指して、「子の親離れ、親の子離れ」の大切さや病院、学校、職場、社会などとの連携についても、さまざまな視点から、できる限り触れるようにした。情報提供と共に相互の信頼関係の構築を目指した。多くのことは手術入院時だけでなく、先輩医師や看護師などスタッフとの語らい、外来診察時や患者会などでの活動の中から学ぶことが多い。