[III-P03-2-07] 小児期僧帽弁置換術後の肺高血圧
キーワード:僧帽弁置換術, 肺高血圧症, 左室拡張末期圧
【背景】小児期に僧帽弁の人工弁置換術(MVR)を施行する例が存在する。人工弁径に適合した体格まで待機するが, 術後の肺高血圧(PH)の存在が問題となる。【目的】小児期のMVR後のPHについて検討した。【方法】対象は2011年~2023年に当院でMVR(手術年齢15歳以下)を施行し, 術前後に心臓カテーテル検査を行った13症例。僧帽弁狭窄(MS群)9例, 僧帽弁逆流(MR群)4例に分け, 平均肺動脈圧(mPAp), 肺動脈楔入圧(PCWP), 左室拡張末期圧(LVEDP)の3因子について検討した. 統計にはMann-Whitney U検定、Spearmanの順位相関係数を用いた。【結果】MVR施行時年齢は中央値7.0(最小3.5)歳。MVR後にmPAp≧20mmHgの肺高血圧が存在した例は、MS群7例(78%), MR群4例(100%)。MVR後の各因子の中央値(範囲)は、MS群でmPAp24 (15-55) mmHg、PCWP14(11-22) mmHg、LVEDP15(9 -30) mmHgと高値。MR群でも、それぞれ23 (20-36) mmHg、15(11-26) mmHg、13(10-13)と高値。予想に反して3因子は、MS群、MR群ともMVR前後で有意な変化はなかった。次に3因子間の相関係数をMVR後、MVR前で求めた。MVR後のMS群では、mPAP・PCWP間でγ=0.915(p=0.001)、mPAp・LVEDP間でγ=0.873(p=0.002)、PCWP・LVEDP間でγ=0.706(p=0.033)と高い相関係数を得た。MVR前のMS群では、3因子間に有意な相関はなかった。MR群では、MVR前、MVR後とも3因子間に有意な関係はなかった。MVR後の全体の内科治療は, βブロッカー7例, ACEI/ARB6例,肺血管拡張薬2例。これらの薬剤が投与されていないのは4例。【まとめ】小児期のMVR後には高率に肺高血圧が存在していた。MVR後のMS群では、肺血圧上昇の多くはPCWPの上昇で説明できた(γ二乗0.84)。しかしPCWP上昇がLVEDP上昇で説明できるのは約半数であった(γ二乗0.50)。MR群については、統計学的に有意な説明はできなかった。小児期のMVR後には、検査データを踏まえて肺高血圧に対して可能な治療を行った方が良い。