[03 心ーポー01] 他者動作と反応刺激の時間差が反応時間に与える影響
日常動作からスポーツまで、われわれは周囲の人の動きに囲まれながら運動を生成する必要がある。とりわけスポーツ場面では、ボール、相手、音にすばやく反応するなど、さまざまな反応刺激に対して離散的かつ瞬発的な運動の生成がしばしば求められる。このような瞬時の反応において、他者の動きが自己の運動生成に与える影響についての理解は限定的である。とくに、反応時間が、直前の他者の動きの影響を受けることは多様な運動で報告されているものの、反応刺激が出た後の他者の動きが自己の反応速度に与える効果は明らかではない。しかしながら、陸上短距離でのスタートをはじめ反応刺激に対して複数の選手が反応する場面が多く存在することを鑑みると、反応刺激後の他者の動きが自己の動きの生成に対して与える効果を検討する意義があると考えられる。そこで本研究は、自己の動作とは独立した他者の動作タイミングの違いが自己の反応時間に与える影響を検証した。実験参加者(N=16、学生)は、画面中央に提示される反応刺激(赤丸)にできるだけ早く反応して、キーから利き手の人差し指を離す単純反応課題を行った。このとき、人差し指の伸展動作を行う他者の手の画像が画面下部に呈示された。反応刺激と他者動作の時間間隔(反応刺激タイミング–他者動作タイミング)は–150 msから150 msの範囲で25 ms刻みで設定した。オンライン実験ツールGORILLAを用い、オンライン環境で実験を実施した。その結果、他者の伸展動作画像が反応刺激よりも早く呈示されるほど、反応時間が短いことが明らかとなった。一方で、他者の伸展動作画像が反応刺激よりも遅れて呈示された場合には、反応時間は遅れの時間間隔の影響を受けなかった。これらのことから、自己の動作に直接的に関係しない他者の運動でも反応速度に影響を与えるものの、その影響度は他者の運動タイミングによって異なることが示された。