[09 方ーポー12] 連続した動きに現れる呼吸位相の実態とこれまで受けてきた呼吸指導について
モダンダンス熟練者を対象に
ダンスにおける呼吸は動きとの関係において非常に重要とされながら、研究レベルでその実態を明らかにするには至っていない。これまでのダンスにおける呼吸の研究自体数少なく、機器などの限界から単発の試技が多く設定されていたことを踏まえ、屋代ら(2021)は、連続した動き中のダンサーの呼吸位相の実態を明らかにした。呼吸測定にはサーミスタ呼吸ピックアップTR‐511を採用し、ダンスにおけるテクニックを含んだ10種の動きの連続を試技とし呼吸を捉えた。実験対象者はA大学舞踊研究室、ダンス部に所属する女子学生10名、経験歴15年以上をⅠ群、5年以上15年未満をⅡ群、5年未満をⅢ群分類した。結果として、呼吸相選択の一致率は経験歴の長さに比例し、Ⅰ群は試技全体の80%、Ⅱ群は20%、Ⅲ群は5%となった。さらに、経験歴15年以上のⅠ群の対象者の呼吸は、呼吸相の移行のタイミングが動きの移行のタイミングと一致しているという特徴を明らかにした。そこで本研究では、モダンダンス熟練者のみを対象とし、熟練者の呼吸の実態を明らかにし、共通する呼吸法抽出を試みることを目的とした。さらに、モダンダンス熟練者がこれまでどのような呼吸指導を受けてきたかについてのアンケートを実験後に行った。呼吸測定機器、試技等は、屋代ら(2021)と同一とし、年齢の2/3以上のダンス歴、全国レベルのコンクールにて3位以内の受賞経験を有することを条件とし5名の対象者を選出した。結果、5名の試技中の呼吸位相の一致率は65%となり、呼吸位相のタイミングと動きの移行のタイミングが一致するという特徴は対象者全員に見られた。また、呼吸指導に関しては、指導を受けたことがあるダンサーが3名、受けたことがないダンサーが2名となり。多くの場合、作品練習の中で呼吸を止めないように指示するものなどで、基礎練習にまで呼吸指導が及んだダンサーはいなかった。