日本体育・スポーツ・健康学会第71回大会

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学校保健体育研究部会 » 【課題C】体育・スポーツ健康科学は学校保健体育の進展にいかに貢献できるか

学校保健体育研究部会【課題C】口頭発表④

2021年9月8日(水) 13:45 〜 15:15 会場13 (Zoom)

座長:末永 祐介(東京女子体育大学)

14:00 〜 14:15

[学校保健体育-C-17] 生徒が主体的に考え表現する学びの創造

プロジェクト型学習で展開する柔道単元

*佐藤 吉高1 (1. お茶の水女子大学附属中学校)

 本研究では、中学校保健体育の武道領域において、プロジェクト型の柔道単元を開発・実践し、効果の検証を行った。現在、世界の教育の潮流はコンテンツベイスからコンピテンシーベイスへと移行し、日本の教育においても知識・技能を獲得する学びから思考・探究を追究する学びへの転換が求められている。
 中学校武道領域においては、既存の技の獲得が授業の目的となっていること、武道の本質を問わず形だけの礼法習得や道徳的規範を教材とする現状があることを有山らが指摘している。そこで本研究では、既存の技の獲得を主目的とせず、生徒が授業で得た知識・技能を主体的に統合し発信する学びを目指し、「受け身の形」の創作を核とした演武プレゼンテーションを創り、柔道の魅力について表現する授業を開発・実践した。
 本実践では、「体育学習観尺度」「体育学習方略尺度」を用い、単元前後の体育に対する認識の変容を分析した。体育が得意な群と苦手な群の2群に分けて分析をした結果、実践前は「技能の習得・身体能力の向上」「教師への関わり」の項目において得意群が有意に高い傾向見られたが、実践後の調査では、2群間の有意差が見られなくなり、2群ともに「知識の習得・魅力の感受・コミュニケーション」を学習に求める傾向が見られると共に、苦手群は「教師への関わり」が強まる傾向が見られた。これらのことから検証授業が生徒の「技能や能力」を重視する認識を「知識や魅力、コミュニケーション」を重視する認識への変容を促したこと、検証授業前には教師への関わりを重視していなかった苦手意識のある生徒の積極的に教師に関わることを求める認識への変容を促したことが明らかとなった。
 また、形成的授業評価からは「成果」を含めたすべての項目が単元の進捗と共に上昇する傾向が見られ、生徒が本実践を肯定的に捉え、得意・不得意に関わらず成果を実感しながら意欲的に学習に取り組めたことが明らかとなった。