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[スポーツ文化-B-04] 「インテグリティ(integrity)」の使用事例にみるスポーツの倫理的問題(政)
78国際競技団体公式サイトの分析を通して
スポーツの価値を毀損する事象、主としてスポーツに関わる倫理的問題に対応すべく、近年、インテグリティという語が使用されている。しかし、倫理的問題の多様さに加え、将来起きうる問題への予防的取り組みにも注意が払われているために、この語の定義は確立していない。この状況下でインテグリティという語を使用することは、具体的な解決課題をかえって不明瞭にすることが懸念される。例えば日本ではインテグリティという語に包含される倫理的問題のうち、主としてドーピング、ガバナンスの欠如、暴力・ハラスメントへの対応はみられるが、賭博や八百長への対応には重きが置かれていない。これは、賭けに関する文化的状況が欧米諸国と異なるためであると考えられる。したがって、インテグリティの射程を捉えるためには、このような文化的な差異をも視野に入れる必要がある。本研究では、インテグリティという語の射程を把握するひとつの方法として、国際スポーツ組織におけるこの語の使用状況について検討を行う。IOCが承認するオリンピックの正式および非正式競技統括団体 (78組織)の公式サイト上で、①語の使用の有無、②使用している場合、どのような倫理的問題を射程に含めているか、について明らかにする。検討の結果、38組織が倫理的問題全体を包含する語として使用し、25組織は特定の倫理的問題のみを射程としていた。また、15組織では語の使用がみられなかった、確認された倫理的問題の上位はドーピング(52組織)、不正操作・八百長(31組織)であった。特定の倫理的問題をインテグリティの射程に含めた25組織では、虐待(15組織)、ハラスメントとドーピング(14組織)が除外され、”Safeguarding”という語で包括する事例が多くみられた。以上から、国際競技団体はインテグリティという言葉を倫理的な問題に対して使用する一方で、選手の安全に関する問題についてはその射程に含まない組織が存在することが明らかになった。