[03心-ポ-10] 選手のバーンアウトに対して特性感謝は独自に関連するか?
ポジティブ感情を統制した検討
バーンアウトは、「情緒的/身体的消耗」「達成感の欠如」「競技に対する価値下げ」からなる心理的症候群であり(Raedeke, 1997)、深刻化すると選手の自殺にもつながるとされる(大隈・西村,2003)。このバーンアウトを防ぐ効果的な介入法を開発するには、バーンアウトに関連する要因を検討する必要がある。近年、特性感謝がバーンアウトと関連することが示されている(Chen et al., 2017)。感謝とは、自分以外の存在から受けた利益を認識することで生じるポジティブな感情であり(Beken et al., 2020)、特性感謝はその感じやすさのことである(吉野・相川,2018)。一方で、特性感謝はバーンアウトとの相関が示されているポジティブ感情(田中・杉山,2015)とも関連していることから(Froh et al., 2009)、特性感謝とバーンアウトとの関連は、ポジティブ感情が交絡しているために生じている可能性も否定できない。そこで本研究では、ポジティブ感情を統制した上で特性感謝がバーンアウトと関連するのかを検討した。大学運動部活動に所属する選手に、日本語版PANAS(佐藤・安田,2001)、特性感謝 2項目、およびBOSA(雨宮ほか,2013)に回答させた。無効回答を除外した411名(平均年齢=19.88歳、男性=357名)の回答を分析に使用した。BOSAの平均得点を目的変数とし、step1に統制変数とポジティブ感情、step2に特性感謝を投入した階層的重回帰分析を実施した。その結果、特性感謝の偏回帰係数はb=–.087(β=–.139、p=.0207)であり、step2の分散説明率の増分はR2=.0102(p=.0207)であった。以上から、バーンアウトに対して特性感謝は独自に関連しているが、その効果量は小さく、バーンアウトにおける特性感謝の効果は限定的であることが示唆された。