[SY6-3] 神経堤細胞を介した多能性幹細胞からの間葉系幹細胞誘導と再生医療応用の可能性
研修コード:3103
略歴
1996年 京都大学理学部 卒業
1998年 京都大学大学院理学研究科 博士前期課程 修了
1998年 日本学術振興会 特別研究員(DC1)
2001年 京都大学大学院理学研究科 博士後期課程 修了(理学博士)
2001年 理化学研究所 研究員
2007年 理化学研究所 基礎科学特別研究員
2009年 熊本大学 発生医学研究所 准教授
2010年 京都大学 再生医科学研究所 研究員
2011年 京都大学 iPS細胞研究所 増殖分化機構研究部門 准教授
2016年 京都大学 iPS細胞研究所 未来生命科学開拓部門 准教授(現職)
1996年 京都大学理学部 卒業
1998年 京都大学大学院理学研究科 博士前期課程 修了
1998年 日本学術振興会 特別研究員(DC1)
2001年 京都大学大学院理学研究科 博士後期課程 修了(理学博士)
2001年 理化学研究所 研究員
2007年 理化学研究所 基礎科学特別研究員
2009年 熊本大学 発生医学研究所 准教授
2010年 京都大学 再生医科学研究所 研究員
2011年 京都大学 iPS細胞研究所 増殖分化機構研究部門 准教授
2016年 京都大学 iPS細胞研究所 未来生命科学開拓部門 准教授(現職)
発生の段階から老年に至るまで,生体にはさまざまな幹細胞が存在している。なかでも間葉系幹細胞は,骨髄,脂肪組織,筋肉組織,臍帯血,胎盤,歯根細胞などに分布し,骨・軟骨・脂肪細胞などといった間葉系の細胞へと分化する能力がある増殖性の間質(結合組織)の細胞である。中胚葉系の様々な臓器に分化することから移植治療の細胞供給源として有望視されており,一部ではすでに臨床応用も開始している。また最近では,間葉系幹細胞が分泌する因子が抗炎症反応や免疫抑制反応などを制御することが示され,個体の維持という点でも極めて重要な役割を果たしていることが分かってきている。
間葉系幹細胞は成体から採取できるため,これまでは研究材料として主に成体由来の間葉系幹細胞が用いられてきた。体外に取り出した間葉系幹細胞は,標準的な培地(10%血清を含むαMEM培地)でシャーレ上の平面培養により拡大培養が可能である。しかし,得られた細胞の品質は血清のロットに大きく左右され,また採取元組織の違いや採取方法による品質の差も存在し,常に一定の品質の細胞を得ることは極めて困難である。また,シャーレ上での数回の継代培養の間に細胞は老化を起こし,一般的には5回程度の継代培養のあと細胞の増殖能は極端に低下する。このため,1回の採取で得られる細胞数が限られているだけでなく,継代培養とともに変化していく細胞の品質は未だレトロスペクティブにしか評価ができず,同じ品質の細胞を大量に得ることも難しい。さらに,間葉系幹細胞は加齢とともに生体内から減少することが分かっており,例えば高齢者の骨髄から得られる間葉系幹細胞は若年者から得られる細胞数よりも少ないことが知られている。
これらの問題点を解決すべく,我々はヒトiPS細胞から間葉系幹細胞を誘導する方法を開発してきた1)-3)。この方法の最も特徴的な点は,iPS細胞から間葉系幹細胞に至る過程で,一旦中間段階の細胞として発生上の起源細胞の1つである神経堤細胞を経る点である。頭部間充織細胞は主に神経堤細胞から分化することが分かっているため,神経堤細胞を経て得られた間葉系幹細胞は歯周組織再生の理想的な細胞源となることが期待される。またそれだけでなく,神経堤細胞は一定条件下で拡大培養が可能であり,実際,我々が用いた培地では少なくとも10回以上は増殖能を落とすことなく継代培養し続けることが可能であった。さらに,この誘導法は血清に依存しない誘導法であるため実験間のばらつきが極めて少なく,また分化段階の途中の細胞である神経堤細胞の状態で大量に作製して凍結保存することで実験回によるブレも最小に抑えることが可能であった。
本講演では我々のこれまでのデータを紹介するとともに,さらに理想的な細胞源とするため,現在,誘導法から動物由来成分の除去(ゼノフリー化),および誘導された間葉系幹細胞の機能評価を行っており,それらも合わせて紹介したい。
1)Fukuta M et al: PLOS One. e112291, 2014.
2)Horikiri T et al: PLOS One. e0170342, 2017.
3)Chijimatsu R et al: Stem Cells International. Article ID 1960965, 2017.
間葉系幹細胞は成体から採取できるため,これまでは研究材料として主に成体由来の間葉系幹細胞が用いられてきた。体外に取り出した間葉系幹細胞は,標準的な培地(10%血清を含むαMEM培地)でシャーレ上の平面培養により拡大培養が可能である。しかし,得られた細胞の品質は血清のロットに大きく左右され,また採取元組織の違いや採取方法による品質の差も存在し,常に一定の品質の細胞を得ることは極めて困難である。また,シャーレ上での数回の継代培養の間に細胞は老化を起こし,一般的には5回程度の継代培養のあと細胞の増殖能は極端に低下する。このため,1回の採取で得られる細胞数が限られているだけでなく,継代培養とともに変化していく細胞の品質は未だレトロスペクティブにしか評価ができず,同じ品質の細胞を大量に得ることも難しい。さらに,間葉系幹細胞は加齢とともに生体内から減少することが分かっており,例えば高齢者の骨髄から得られる間葉系幹細胞は若年者から得られる細胞数よりも少ないことが知られている。
これらの問題点を解決すべく,我々はヒトiPS細胞から間葉系幹細胞を誘導する方法を開発してきた1)-3)。この方法の最も特徴的な点は,iPS細胞から間葉系幹細胞に至る過程で,一旦中間段階の細胞として発生上の起源細胞の1つである神経堤細胞を経る点である。頭部間充織細胞は主に神経堤細胞から分化することが分かっているため,神経堤細胞を経て得られた間葉系幹細胞は歯周組織再生の理想的な細胞源となることが期待される。またそれだけでなく,神経堤細胞は一定条件下で拡大培養が可能であり,実際,我々が用いた培地では少なくとも10回以上は増殖能を落とすことなく継代培養し続けることが可能であった。さらに,この誘導法は血清に依存しない誘導法であるため実験間のばらつきが極めて少なく,また分化段階の途中の細胞である神経堤細胞の状態で大量に作製して凍結保存することで実験回によるブレも最小に抑えることが可能であった。
本講演では我々のこれまでのデータを紹介するとともに,さらに理想的な細胞源とするため,現在,誘導法から動物由来成分の除去(ゼノフリー化),および誘導された間葉系幹細胞の機能評価を行っており,それらも合わせて紹介したい。
1)Fukuta M et al: PLOS One. e112291, 2014.
2)Horikiri T et al: PLOS One. e0170342, 2017.
3)Chijimatsu R et al: Stem Cells International. Article ID 1960965, 2017.