第51回日本理学療法学術大会

講演情報

日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT)

日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT)
若手研究者(U39)による最先端研究紹介(1)

2016年5月28日(土) 18:10 〜 19:10 第1会場 (札幌コンベンションセンター 1階 大ホールA)

司会:石田和人(名古屋大学大学院医学系研究科)

[KS1013-2] 筋骨格シミュレーション解析が理学療法にもたらすもの

小栢進也 (大阪府立大学地域保健学域総合リハビリテーション学類理学療法学専攻)

関節運動から関節モーメント,筋の発揮張力を推測して動作を阻害する筋を特定する動作分析は,理学療法に不可欠な評価手段である。従来のバイオメカニクス研究では動作解析装置を用いて関節運動や関節モーメントが測定されてきた。しかし,筋の発揮張力は計測が困難なことから,動作と筋の直接的関係を調べることができなかった。一方,工学分野で発展してきた筋骨格シミュレーションは骨や筋腱複合体をモデル化し,計算式を用いて筋が発揮する力を求める。これにより,どの筋が関節運動に強く関与するかなど,動作における筋の役割が明確となってきている。数式の難解さ故に医学分野で用いられることは少ないが,多関節運動を理解する上で筋骨格シミュレーション解析の概念は動作分析に有用な情報をもたらすと考える。
筋骨格シミュレーション解析では数値入力だけで筋活動や関節運動を変え,仮想の動作をコンピュータ上で作り出すことができる。筋の活動変化は複数の関節に影響するとされており,多関節運動における筋の役割を解析する手段として用いられている。例えば,立位で前脛骨筋が収縮すると脛骨は前傾して膝が前方に移動する。膝の前方移動は大腿骨を後傾させるため,前脛骨筋は足背屈に加えて膝や股関節を屈曲させる。シミュレーション解析を用いれば,発揮張力に応じて多関節の運動変化を調べられるため,動作測定からどの筋をトレーニングすべきかの特定につながる。
我々はこれまで変形性膝関節症進行の予防法検討のため,歩容と膝関節ストレスの関連性を検討してきた。関節ストレスには大腿四頭筋や腓腹筋の活動が強く関与することがわかっている。また,外乱刺激後の姿勢反応をモデル化し,姿勢制御における同時収縮の役割や多関節の制御メカニズムを調べている。本発表ではこれらの結果を紹介しながら理学療法に有用な情報を伝える。