第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題口述

日本心血管理学療法学会 一般演題口述
(心血管)02

2016年5月27日(金) 11:10 〜 12:10 第5会場 (札幌コンベンションセンター 2階 201+202)

座長:舟見敬成((一財)総合南東北病院 リハビリテーション科), 神谷健太郎(北里大学病院 リハビリテーション部)

[O-HT-02-2] ST上昇型心筋梗塞と非ST上昇型急性冠症候群における急性期心臓リハビリテーションの臨床的特徴

米澤隆介1, 若梅一樹1, 目黒智康1, 利根川涼子1, 田沼志保1, 成田美加子1, 桒原慶太1, 塩野方明2 (1.北里大学メディカルセンターリハビリテーションセンター, 2.北里大学メディカルセンター循環器内科)

キーワード:急性冠症候群, 急性期心臓リハビリテーション, 安全性

【はじめに,目的】急性冠症候群(ACS)に対する急性期心臓リハビリテーション(心リハ)は,日常生活活動を早期に再獲得させ身体デコンディショニングを予防する目的で推奨されている。ACSの初期治療としてST上昇型心筋梗塞(STEMI)では緊急的な経皮的冠動脈インターベンション(PCI)が確立されているが,非ST上昇型急性冠症候群(NSTEACS)では必ずしも早期の血行再建術は適応されない。したがって,ACSに対する急性期心リハでは初期の治療状況に適したリスク層別が重要と思われる。本研究は,STEMIとNSTEACSにおける急性期心リハの臨床的特徴を後方視的に検討することを目的とした。

【方法】2015年4月から10月の期間にACSで入院し心リハの処方のあった43例をSTEMI群23例(67±11歳,男性21例)とNSTEACS群19例(71±12歳,男性14例。疾患の内訳は不安定狭心症15例,非ST上昇型心筋梗塞4例)に分類し,急性期の治療状況と急性期心リハの進行状況を比較した。急性期心リハは医師の指示のもと椅子座位,50m歩行,200m歩行,4メッツの有酸素運動,階段昇降の順で進行した。なお,STEMIの診断であったが心不全増悪により入院期間が長期化した1名は解析から除外した。統計解析は対応のないT検定とカイ二乗検定を用い,有意水準は95%未満とした。

【結果】急性期治療として緊急PCIを施行されたのはSTEMI群では23例(100%)であったが,NSTEACS群では13例(68%)であり,残りの6例のうち5例は平均して入院6日後に,1例は退院後に再入院して待機的PCIが施行された。NSTEACS群の1例を除き,PCIの穿刺部は2群とも全例で上腕動脈または橈骨動脈であった。ACSの重症度を示す最大血清CK値はSTEMI群がNSTEACS群よりも有意に大きかったが(2109±1932 vs. 315±260,p<0.01),3枝病変の有病率はSTEMI群よりもNSTEACS群のほうが多い傾向があった(9% vs. 32%,P=0.06)。入院中の薬剤治療は2群ともほぼ全例で抗血小板薬2剤併用療法,ACE阻害薬,スタチン,およびβ遮断薬が処方されていた。急性期心リハを全て完遂したのはSTEMI群では20例で,NSTEACS群では17例であった。なお,完遂しなかった理由は2群とも早期退院もしくは歩行能力低下であった。急性期心リハの各段階を達成した入院からの経過日数をSTEMI群とNSTEACS群で比較した結果,椅子座位(2±1 vs. 1±1,NS),200m歩行(4±2 vs. 4±1,NS),4メッツの有酸素運動(7±2 vs. 5±2,NS),および階段昇降(8±2 vs. 6±2,NS)の全てで有意差を認めなかった。また,入院期間も2群間で有意差は認めなかった(11±3 vs. 9±3,NS)。

【結論】STEMIと比べてNSTEACSでは心筋障害は軽症であったが,PCIが施行されていない状況下で急性期心リハを実施する場合もあり,心筋虚血のリスク管理はより重要と思われた。しかし,PCIの有無によらず,入院中の手厚い医学的管理下では急性期心リハは安全に進行することが可能と思われた。