[O-KS-23-2] 筋収縮に伴う大腿直筋・筋内腱の動態と筋力の関係
若年女性を対象とした超音波による観察
キーワード:超音波, 筋力, 筋内腱
【はじめに,目的】
羽状筋は中央を走行する筋内腱から筋線維が起始し周囲の腱膜に停止するという形態的特徴を有している。その筋線維と筋内腱の角度である羽状角と筋力には関連があるといわれているが,筋収縮に伴う筋内腱の動的な変化の程度と筋力の関連は明らかにされていない。本研究の目的はヒトの大腿直筋を対象に筋収縮に伴う筋内腱の動態を明らかにし,筋力との関係を検討することである。
【方法】
若年女性27名(年齢21±1歳,身長159.0±4.7 cm,体重53.1±5.9 kg)の右下肢を対象とした。大腿直筋の観察は超音波画像診断装置(日立,HI VISION AVIUS:14MHz,リニアプローブ,Bモード)を用い,3年以上の経験のある検者1名が実施した。観察部位は下前腸骨棘と膝蓋骨を結ぶ線の中点,観察肢位は股関節・膝関節90°屈曲位の椅子座位とし,骨盤・大腿遠位部をベルトで固定した。プローブは皮膚面に垂直に当て,短軸像を撮影した。この方法で筋内腱はcomma shaped hyperechoic bandとして描出できる。筋内腱の同定ではプローブを上下方向に動かし,連続性を確認して行った。超音波による観察は筋力測定(Musculator GT30,OG技研)に同期させ,安静時と等尺性膝伸展最大筋力発揮中の動画を記録した。最大等尺性収縮は3回行い,最大値を最大筋力とし,その際の超音波画像を解析に用いた。筋内腱は“comma”のような弧形のため,形態を測定するために筋内腱前方端と後方端の距離(A)に対する筋内腱のカーブの頂点からAに降ろした垂線の距離(B)の比B/A(アーチ率:%)を算出した。アーチ率は値が低いほど直線的であることを意味する。
統計学的検討では,安静時と収縮時のアーチ率を比較するために対応のあるt検定を行った。また,安静時のアーチ率と最大筋力,安静時と収縮時のアーチ率の差と最大筋力の関連を検討するためPearsonの相関係数を求めた。解析ソフトはSPSS 22を用い,有意水準は5%未満とした。
【結果】
アーチ率は安静時よりも収縮時の方が有意に低値を示した(14.4±9.5% vs 4.5±5.9%,p<0.001)。安静時と収縮時のアーチ率の差と最大筋力には有意な正の相関を認めた(r=0.498,p=0.008)。一方,安静時のアーチ率と筋力には有意な相関を認めなかった(p=0.088)。
【結論】
大腿直筋の筋内腱は筋収縮に伴い直線化し,直線化の程度と最大筋力には中等度の相関を認めた。羽状筋は筋全体が生成する筋力のうち筋内腱に平行に作用する力成分の和が筋力として反映される。筋収縮は腱を介して伝達されるため,腱の動態は腱に作用する筋力を反映すると考えられる。さらに,力学的負荷による腱組織リモデリングも報告されており,過緊張や筋萎縮などの病的条件下では腱の形態や性状が変化することが推察される。このことが筋力に影響を与える可能性が示唆され,今後の検討が必要である。本研究は筋収縮中の筋内腱の動態を初めて報告したものであり,基礎データとして意義がある。
羽状筋は中央を走行する筋内腱から筋線維が起始し周囲の腱膜に停止するという形態的特徴を有している。その筋線維と筋内腱の角度である羽状角と筋力には関連があるといわれているが,筋収縮に伴う筋内腱の動的な変化の程度と筋力の関連は明らかにされていない。本研究の目的はヒトの大腿直筋を対象に筋収縮に伴う筋内腱の動態を明らかにし,筋力との関係を検討することである。
【方法】
若年女性27名(年齢21±1歳,身長159.0±4.7 cm,体重53.1±5.9 kg)の右下肢を対象とした。大腿直筋の観察は超音波画像診断装置(日立,HI VISION AVIUS:14MHz,リニアプローブ,Bモード)を用い,3年以上の経験のある検者1名が実施した。観察部位は下前腸骨棘と膝蓋骨を結ぶ線の中点,観察肢位は股関節・膝関節90°屈曲位の椅子座位とし,骨盤・大腿遠位部をベルトで固定した。プローブは皮膚面に垂直に当て,短軸像を撮影した。この方法で筋内腱はcomma shaped hyperechoic bandとして描出できる。筋内腱の同定ではプローブを上下方向に動かし,連続性を確認して行った。超音波による観察は筋力測定(Musculator GT30,OG技研)に同期させ,安静時と等尺性膝伸展最大筋力発揮中の動画を記録した。最大等尺性収縮は3回行い,最大値を最大筋力とし,その際の超音波画像を解析に用いた。筋内腱は“comma”のような弧形のため,形態を測定するために筋内腱前方端と後方端の距離(A)に対する筋内腱のカーブの頂点からAに降ろした垂線の距離(B)の比B/A(アーチ率:%)を算出した。アーチ率は値が低いほど直線的であることを意味する。
統計学的検討では,安静時と収縮時のアーチ率を比較するために対応のあるt検定を行った。また,安静時のアーチ率と最大筋力,安静時と収縮時のアーチ率の差と最大筋力の関連を検討するためPearsonの相関係数を求めた。解析ソフトはSPSS 22を用い,有意水準は5%未満とした。
【結果】
アーチ率は安静時よりも収縮時の方が有意に低値を示した(14.4±9.5% vs 4.5±5.9%,p<0.001)。安静時と収縮時のアーチ率の差と最大筋力には有意な正の相関を認めた(r=0.498,p=0.008)。一方,安静時のアーチ率と筋力には有意な相関を認めなかった(p=0.088)。
【結論】
大腿直筋の筋内腱は筋収縮に伴い直線化し,直線化の程度と最大筋力には中等度の相関を認めた。羽状筋は筋全体が生成する筋力のうち筋内腱に平行に作用する力成分の和が筋力として反映される。筋収縮は腱を介して伝達されるため,腱の動態は腱に作用する筋力を反映すると考えられる。さらに,力学的負荷による腱組織リモデリングも報告されており,過緊張や筋萎縮などの病的条件下では腱の形態や性状が変化することが推察される。このことが筋力に影響を与える可能性が示唆され,今後の検討が必要である。本研究は筋収縮中の筋内腱の動態を初めて報告したものであり,基礎データとして意義がある。