[O-MT-02-3] 変形性膝関節症患者における活動量と身体機能の関係性
キーワード:変形性膝関節症, 身体活動量, 機能評価
【はじめに,目的】変形性膝関節症(膝OA)患者において,日常生活での活動量が低い状態にあると,将来的に身体機能の低下が生じ易いことが報告されている。このような背景のもと,膝OA患者の活動量を増大させることで,身体機能の維持・向上を図る取り組みが多く報告されている。しかしながら,活動量の増大とともに,身体機能も比例して直線的に向上するかどうかということについては,未だ明らかにされていない。本研究では,日常生活における活動量と身体機能の関係性を複数の観点から横断的に検討することで,より効果的な治療介入を探ることを目的とした。
【方法】整形外科に通院する膝OA患者207名(年齢:73.1±7.7歳)を対象として,14日間の平均活動量(歩数/日)を歩数計を用いて評価した。主観的/客観的な身体機能として,変形性膝関節症機能評価尺度(JKOM)の下位尺度“日常生活の状態”,歩行速度,Timed Up and Go(TUG),Five repetition Chair Stand(5CS)を評価した。統計学的解析は,最初に,Tudor-Lockeらの報告を基に,活動量別に3群(<5000,5000-7499,≧7500歩数/日)に分け,身体機能を3群間で比較した。次に,各身体機能をそれぞれ従属変数に投入し,平均活動量,年齢,性別,body mass index,Kellgren/Lawrence gradeを独立変数に強制投入した重回帰分析と分位点回帰分析の2種類の解析を行い,歩行1000歩あたりの偏回帰係数(beta)を算出した。統計処理はJMP11を使用し,統計学的有意水準は5%とした。
【結果】活動量別の3群と身体機能の間には段階的な関係性を認め,5000歩未満の対象者(137名,66.2%)では,その他の2群よりも,“日常生活の状態”,TUG,5CSを主とした身体機能が有意に低かった(P<0.05)。分位点回帰分析の結果,身体機能の各パーセンタイル間でbetaが異なり,特に“日常生活の状態”ではパーセンタイルが増大する(身体機能の悪化)に従い,歩数1000歩あたりのbetaが増大する傾向を認めた(beta:25th=-0.35,50th=-0.60,75th=-0.87;P<0.05)。TUGや5CSも同様の傾向を認めたが,歩行速度に関しては,各パーセンタイル間でのbetaに大きな差は見られず,betaは0.02と小さかった(P<0.05)。
【結論】活動量が5000歩未満の対象者は身体機能が低いことから,1日5000歩以上の歩行は一つの介入目標になることが示唆された。興味深いことに,身体機能が低い対象者ほど,歩行1000歩あたりのbetaが高かった。したがって,身体機能の低い対象者ほど,活動量の増大に伴い身体機能が向上する可能性がある。同時に,その治療効果を適切に判定するためには,10m歩行試験のような単一の評価だけでなく,TUGや5CS等の,異なる課題を含んだ複合的な評価が必要であることが示唆された。
【方法】整形外科に通院する膝OA患者207名(年齢:73.1±7.7歳)を対象として,14日間の平均活動量(歩数/日)を歩数計を用いて評価した。主観的/客観的な身体機能として,変形性膝関節症機能評価尺度(JKOM)の下位尺度“日常生活の状態”,歩行速度,Timed Up and Go(TUG),Five repetition Chair Stand(5CS)を評価した。統計学的解析は,最初に,Tudor-Lockeらの報告を基に,活動量別に3群(<5000,5000-7499,≧7500歩数/日)に分け,身体機能を3群間で比較した。次に,各身体機能をそれぞれ従属変数に投入し,平均活動量,年齢,性別,body mass index,Kellgren/Lawrence gradeを独立変数に強制投入した重回帰分析と分位点回帰分析の2種類の解析を行い,歩行1000歩あたりの偏回帰係数(beta)を算出した。統計処理はJMP11を使用し,統計学的有意水準は5%とした。
【結果】活動量別の3群と身体機能の間には段階的な関係性を認め,5000歩未満の対象者(137名,66.2%)では,その他の2群よりも,“日常生活の状態”,TUG,5CSを主とした身体機能が有意に低かった(P<0.05)。分位点回帰分析の結果,身体機能の各パーセンタイル間でbetaが異なり,特に“日常生活の状態”ではパーセンタイルが増大する(身体機能の悪化)に従い,歩数1000歩あたりのbetaが増大する傾向を認めた(beta:25th=-0.35,50th=-0.60,75th=-0.87;P<0.05)。TUGや5CSも同様の傾向を認めたが,歩行速度に関しては,各パーセンタイル間でのbetaに大きな差は見られず,betaは0.02と小さかった(P<0.05)。
【結論】活動量が5000歩未満の対象者は身体機能が低いことから,1日5000歩以上の歩行は一つの介入目標になることが示唆された。興味深いことに,身体機能が低い対象者ほど,歩行1000歩あたりのbetaが高かった。したがって,身体機能の低い対象者ほど,活動量の増大に伴い身体機能が向上する可能性がある。同時に,その治療効果を適切に判定するためには,10m歩行試験のような単一の評価だけでなく,TUGや5CS等の,異なる課題を含んだ複合的な評価が必要であることが示唆された。