[P-HT-06-1] 入院心不全患者における歩行時酸素摂取量と運動耐容能の関係
キーワード:心不全, 歩行時酸素摂取量, 運動耐容能
【はじめに,目的】健常例と比較し,心不全患者では同レベルの運動でより多い酸素摂取量(VO2)を必要とするとされている。外来安定期の心不全患者を対象に歩行時VO2の最高値と運動耐容能との関係を検討した先行報告では,運動耐容能が低い患者ほど歩行時VO2が低値になるとされている。また,急性心不全は,新規発症や慢性心不全の急性増悪により起こり,原因疾患は様々である。しかしながら,入院期の心不全患者を対象として歩行時VO2と運動耐容能の関係や心不全背景との関係を示した報告は見当たらない。そこで今回は,入院心不全患者を対象として歩行時VO2と運動耐容能の関係を心不全背景別で明らかにすることを目的とした。
【方法】対象は,2014年3月~2015年10月までに当院へ心不全加療目的で入院となった14例であり,男性8例(57%),女性6例(43%),年齢は64.0±18.3歳,BMI 22.8±3.9kg/m2であった。入院時左室駆出率は,34.7±16.4%,入院時BNPは,632.8±375.1pg/mlであった。原因疾患の内訳は,虚血性心疾患1例(7%),心筋症9例(64%),弁膜症1例(7%),その他3例(21%)であった。また,慢性心不全の急性増悪7例(50%),新規発症7例(50%)であった。歩行時VO2は,携帯型呼気ガス分析器(FitMate2000,COSMED社)を用いて退院時に測定し,その平均値と最高値(ml/kg/min)を求めた。測定は3分間の安静座位後に快適歩行速度で6分間実施した。運動耐容能の指標は,最高酸素摂取量(peak VO2)とした。peak VO2は,固定型呼気ガス分析器(Cpex-1,Inter Reha社)を用いて心肺運動負荷試験(CPX)を施行し,サイクルエルゴメータによるramp負荷法にて測定した。統計学的解析は,慢性心不全の急性増悪群と新規発症群の2群における各々の歩行時平均VO2(average VO2:aVO2),歩行時最高VO2(highest VO2:hVO2)とpeak VO2との相関をスピアマンの相関係数を用い,危険率は5%未満とした。
【結果】aVO2は8.2±1.7ml/kg/min,hVO2は9.9±1.9ml/kg/min,peak VO2は15.4±4.7 ml/kg/minであった。新規発症群のaVO2とpeak VO2との相関係数はρ=-0.223(p=0.273),hVO2とpeak VO2との相関係数はρ=-0.198(p=0.313)であり,有意な相関を認めなかった。慢性心不全の急性増悪群のaVO2とpeak VO2との相関係数はρ=-0.107(p=0.396)であり有意な相関を認めなかったが,hVO2とpeak VO2との相関係数はρ=0.821(p<0.05)で有意な正の相関を認めた。
【結論】新規発症群では,歩行時VO2と運動耐容能に有意な相関を認めなかった。しかし,慢性心不全の急性増悪群では,hVO2とpeak VO2との関係に強い正の相関を示し,運動耐容能低下例では快適歩行時の最高VO2が低値であった。入院心不全患者に対して歩行時VO2をエネルギー消費の指標として用いる際には,心不全の背景を考慮する必要がある。心不全患者の歩行時VO2を規定する因子の検討が今後の課題である。
【方法】対象は,2014年3月~2015年10月までに当院へ心不全加療目的で入院となった14例であり,男性8例(57%),女性6例(43%),年齢は64.0±18.3歳,BMI 22.8±3.9kg/m2であった。入院時左室駆出率は,34.7±16.4%,入院時BNPは,632.8±375.1pg/mlであった。原因疾患の内訳は,虚血性心疾患1例(7%),心筋症9例(64%),弁膜症1例(7%),その他3例(21%)であった。また,慢性心不全の急性増悪7例(50%),新規発症7例(50%)であった。歩行時VO2は,携帯型呼気ガス分析器(FitMate2000,COSMED社)を用いて退院時に測定し,その平均値と最高値(ml/kg/min)を求めた。測定は3分間の安静座位後に快適歩行速度で6分間実施した。運動耐容能の指標は,最高酸素摂取量(peak VO2)とした。peak VO2は,固定型呼気ガス分析器(Cpex-1,Inter Reha社)を用いて心肺運動負荷試験(CPX)を施行し,サイクルエルゴメータによるramp負荷法にて測定した。統計学的解析は,慢性心不全の急性増悪群と新規発症群の2群における各々の歩行時平均VO2(average VO2:aVO2),歩行時最高VO2(highest VO2:hVO2)とpeak VO2との相関をスピアマンの相関係数を用い,危険率は5%未満とした。
【結果】aVO2は8.2±1.7ml/kg/min,hVO2は9.9±1.9ml/kg/min,peak VO2は15.4±4.7 ml/kg/minであった。新規発症群のaVO2とpeak VO2との相関係数はρ=-0.223(p=0.273),hVO2とpeak VO2との相関係数はρ=-0.198(p=0.313)であり,有意な相関を認めなかった。慢性心不全の急性増悪群のaVO2とpeak VO2との相関係数はρ=-0.107(p=0.396)であり有意な相関を認めなかったが,hVO2とpeak VO2との相関係数はρ=0.821(p<0.05)で有意な正の相関を認めた。
【結論】新規発症群では,歩行時VO2と運動耐容能に有意な相関を認めなかった。しかし,慢性心不全の急性増悪群では,hVO2とpeak VO2との関係に強い正の相関を示し,運動耐容能低下例では快適歩行時の最高VO2が低値であった。入院心不全患者に対して歩行時VO2をエネルギー消費の指標として用いる際には,心不全の背景を考慮する必要がある。心不全患者の歩行時VO2を規定する因子の検討が今後の課題である。