[P-HT-06-2] 致死性不整脈を有した慢性心不全急性増悪2症例のリスク管理と運動指導
Keywords:慢性心不全, リスク管理, 運動指導
【はじめに,目的】
虚血性心疾患や心筋症は心室頻拍(VT)や心室細動(VF)などの致死性不整脈の出現リスクが高い。今回,致死性不整脈を有した慢性心不全(CHF)急性増悪患者に対し,不整脈やChronotropic Incompetence(変時性不全)などの諸問題に対処し,リスク管理のもと段階的に運動指導を進めた2症例を報告する。
【方法】
対象はCHF患者2症例である。症例Aは虚血性心筋症でCHFを有する59歳男性。意識消失で入院し処置中にVFで心肺蘇生後,急性心不全を呈した。アミオダロンの投与が開始され,強心剤投与終了後よりリハビリテーション(RH)を開始した。心機能改善と心臓突然死予防目的に両室ペーシング機能付き植込み型除細動器(CRT-D)を植込みしたが,electrical stormで除細動が頻回作動しRHは中止となった。心室期外収縮(PVC)を契機とする致死性不整脈に対しカテーテルアブレーション後にRHを再開した。簡易身体評価で行ったブリッジ動作で自然停止の非持続性VT(NSVT)が出現した。また座位姿勢は首下がりであった為,頸部伸展動作を実施した所,PVCの頻発と迷走神経反射が出現した。
症例Bは78歳男性。拡張型心筋症によるCHF急性増悪で入院。RHは症状軽快後に開始したが,低心拍出症候群(LOS)やVTを認めCRT-D植込み術を施行した。その後は感染等で度重なるLOSにより,RHの中断と再開を繰り返しながらも段階的にトイレ歩行まで進めた。しかし,常に下限レートの70ppmに依存して疲労感を訴え,運動耐容能の向上は困難だった。
【結果】
2症例ともにLOSや不整脈の出現に注意し,医師の指示のもと運動療法を進めた。症例Aはブリッジ動作の殿部挙上時に呼気を徹底したが,NSVTが出現した為,胸腔内圧が上昇しにくい座位や立位で運動療法を実施し,頸部過伸展は行わないよう指導した。その後は運動誘発性の不整脈は見られず,Specific Activity Scale(SAS)は2Metsで自宅退院した。症例Bは変時性不全に対し,医師と相談してCRT-DにRate Response機能(RR機能)を追加した。その後は歩行距離を増加しても疲労感は少なく,SASは2Metsで自宅退院した。
【結論】
2症例は致死性不整脈の出現率が高く運動療法の合併症リスクは高リスクとした。症例Aのブリッジ動作では,腹部臓器の下降による胸腔内圧の変化やアミオダロンによるQT延長が循環動態に影響を及ぼし,NSVTが出現したと考えられる。頸部伸展動作では,QT延長かつ頸部圧受容体反射で迷走神経反射やPVCが出現したと考えられる。特定の動作で循環動態に悪影響を及ぼす事を認識し,運動指導を工夫した。症例Bでは労作時も下限レートに依存し,活動に対する心拍出量が低下して疲労症状が出現していたと推測された。RR機能により運動に対する適切な心拍応答が得られ,症状が軽快して活動量増加を認めたと考えられる。2症例を通し,医師との密な連携で問題点を共有する事とリスク管理や運動指導の重要性を再認識する事ができた。
虚血性心疾患や心筋症は心室頻拍(VT)や心室細動(VF)などの致死性不整脈の出現リスクが高い。今回,致死性不整脈を有した慢性心不全(CHF)急性増悪患者に対し,不整脈やChronotropic Incompetence(変時性不全)などの諸問題に対処し,リスク管理のもと段階的に運動指導を進めた2症例を報告する。
【方法】
対象はCHF患者2症例である。症例Aは虚血性心筋症でCHFを有する59歳男性。意識消失で入院し処置中にVFで心肺蘇生後,急性心不全を呈した。アミオダロンの投与が開始され,強心剤投与終了後よりリハビリテーション(RH)を開始した。心機能改善と心臓突然死予防目的に両室ペーシング機能付き植込み型除細動器(CRT-D)を植込みしたが,electrical stormで除細動が頻回作動しRHは中止となった。心室期外収縮(PVC)を契機とする致死性不整脈に対しカテーテルアブレーション後にRHを再開した。簡易身体評価で行ったブリッジ動作で自然停止の非持続性VT(NSVT)が出現した。また座位姿勢は首下がりであった為,頸部伸展動作を実施した所,PVCの頻発と迷走神経反射が出現した。
症例Bは78歳男性。拡張型心筋症によるCHF急性増悪で入院。RHは症状軽快後に開始したが,低心拍出症候群(LOS)やVTを認めCRT-D植込み術を施行した。その後は感染等で度重なるLOSにより,RHの中断と再開を繰り返しながらも段階的にトイレ歩行まで進めた。しかし,常に下限レートの70ppmに依存して疲労感を訴え,運動耐容能の向上は困難だった。
【結果】
2症例ともにLOSや不整脈の出現に注意し,医師の指示のもと運動療法を進めた。症例Aはブリッジ動作の殿部挙上時に呼気を徹底したが,NSVTが出現した為,胸腔内圧が上昇しにくい座位や立位で運動療法を実施し,頸部過伸展は行わないよう指導した。その後は運動誘発性の不整脈は見られず,Specific Activity Scale(SAS)は2Metsで自宅退院した。症例Bは変時性不全に対し,医師と相談してCRT-DにRate Response機能(RR機能)を追加した。その後は歩行距離を増加しても疲労感は少なく,SASは2Metsで自宅退院した。
【結論】
2症例は致死性不整脈の出現率が高く運動療法の合併症リスクは高リスクとした。症例Aのブリッジ動作では,腹部臓器の下降による胸腔内圧の変化やアミオダロンによるQT延長が循環動態に影響を及ぼし,NSVTが出現したと考えられる。頸部伸展動作では,QT延長かつ頸部圧受容体反射で迷走神経反射やPVCが出現したと考えられる。特定の動作で循環動態に悪影響を及ぼす事を認識し,運動指導を工夫した。症例Bでは労作時も下限レートに依存し,活動に対する心拍出量が低下して疲労症状が出現していたと推測された。RR機能により運動に対する適切な心拍応答が得られ,症状が軽快して活動量増加を認めたと考えられる。2症例を通し,医師との密な連携で問題点を共有する事とリスク管理や運動指導の重要性を再認識する事ができた。