第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本心血管理学療法学会 一般演題ポスター
心血管P06

Sun. May 29, 2016 10:00 AM - 11:00 AM 第11会場 (産業振興センター 2階 セミナールームA)

[P-HT-06-3] 解離性胸部大動脈瘤破裂に対し保存療法を行った症例の理学療法経験

松土理恵1, 山口智大1, 有本宗仁2, 八百板寛子2, 大幸俊司2, 瀬在明2, 畑博明2, 塩野元美2 (1.日本大学医学部附属板橋病院リハビリテーション科, 2.日本大学医学部心臓血管・呼吸器・総合外科)

Keywords:胸部大動脈瘤破裂, 保存療法, リハビリテーション

【はじめに,目的】

胸部大動脈瘤破裂に対しては人工血管置換術やステントグラフト術が選択肢となるため,保存療法での理学療法の報告は少ない。今回,解離性胸部大動脈瘤破裂となったが気胸に対する手術が既往にあったため,保存療法で治療し得た症例の理学療法を経験したので報告する。


【方法】

55歳男性,既往歴に気胸術後(20代),高血圧,高脂血症,肥満。突然の左胸痛,冷汗,呼吸困難感あり,救急隊要請当院CCU搬送となった。造影CTにて食道に沿って縦隔内血腫,左胸腔内血腫認め,解離性大動脈瘤破裂の診断となった。CTでは弓部大動脈から腹腔動脈直上までの血栓閉塞型のB解離も存在し,頸部3分枝にも解離は及んでいた。手術療法も検討されたが,両側気胸の術後の既往もあり,左開胸が困難となることが予測され,癒着により血腫の拡大傾向なく血行動態が安定していたため,保存療法の方針となった。


【結果】

入院1日目(以下日目)より呼吸状態悪化,不穏となり2日目挿管,無気肺,肺炎あり人工呼吸管理となった。11日目胸腔内血腫穿刺,15日目気管切開。17日目よりリハビリ開始となった。リハビリ介入時の血圧は145/84mmHg,脈拍83回/分,SIMVにて人工呼吸器管理。血圧は高めで推移しており,バイタルサインを確認しながら前傾側臥位を取り入れた体位排痰を行い呼吸状態の改善を目指した。また,段階的に離床を進め,20日目より端座位練習開始。21日目徐々に腎機能悪化し,持続的血液濾過透析(以下CHDF)導入。その後もリハビリ継続し25日目日中は人工呼吸器離脱,27日目より車いすにて離床時間を延長,立位足踏み練習などを取り入れた。34日目CHDFからHDFに移行。経過中,感染による発熱や不穏状態となった期間を認めたが,47日目100m歩行,49日目一般病棟へ,49日目200m歩行,52日目500m歩行,58日目腎機能改善し透析離脱,59日目不眠と不安の訴えあり心療内科を兼科,82日目精神的に安定しADLも自立しているが,心臓リハビリ継続目的に転院となった。


【結論】

今回,解離性胸部大動脈瘤破裂があったものの気胸の手術をしていたため,保存療法を選択された症例の理学療法を経験した。再破裂や解離の伸展の危険があるため,呼吸理学療法として用手的呼吸介助手技は使用することが出来ず,予防的な体位排痰法や呼吸法の指導などを行った。離床を進める際にもバイタルサインや疼痛に留意し,再破裂や解離の伸展を予防しながら理学療法を進めた。医師,看護師,臨床心理士,理学療法士の多職種による介入により,臥床期間は長かったが,若齢であり,血行動態のコントロール行うことで再破裂や解離の伸展なく離床を進める事が可能であった。