[P-HT-06-4] StanfordA型急性大動脈解離術後の遅発性不全対麻痺に対し,術後リハビリテーションの施行によりADLの改善が得られた1症例
Keywords:StanfordA型急性大動脈解離術後, 遅発性対麻痺, 術後リハビリテーション
【はじめに】上行大動脈術後に生じる遅発性対麻痺の合併は稀であり,報告例も非常に少ない。今回StanfordA型急性大動脈解離に対する弓部置換術後に生じた遅発性対麻痺の術後リハビリテーションを施行しADLの改善が得られた1症例を経験したので報告する。
【症例】53歳男性。StanfordA型急性大動脈解離・偽腔開存型を発症し,当院で緊急手術(弓部置換術,上行大動脈-左鎖骨下動脈バイパス術)を施行した。術後3日目よりベッドサイドからリハビリテーションを開始した。術後5日目には歩行車で50m歩行可能となったが,術後6日目未明と術後7日目に強い腰背部痛が出現し,対麻痺を発症した。脳脊髄液ドレナージ(以下CSFDと略す)が開始されたが,SpinalShock様症状を呈したため,カテコラミン等の薬物療法も併用された。リハビリテーションが術後8日目から再開となり,術後10日目にCSFD抜去され,術後19日目に一般病棟転棟した。その後もリハビリテーション継続し,最終的には平行棒内で足踏みが監視レベルで可能となった。術後評価の造影CTでは偽腔は血栓化が進み,臓器灌流障害もなく経過良好であった為,術後40日目にリハビリテーション継続目的に転院となった。
【考察】本症例は両下肢の著明な筋力低下(左優位の不全対麻痺)に加え,腰部・下肢・臀部の強い神経障害性疼痛(L5~S1-5領域の異常感覚)や自尿困難を認めており,いわゆる前脊髄動脈症候群とは異なる非定型的で多発性の塞栓症と思われる所見を呈していた。特に臀部に出現する疼痛のコントロールに難渋したことが,本症例のリハビリテーションの進行に大きな影響を与えていた。また,術後の脊髄障害は遅発性神経障害と呼ばれ,術後の低血圧が遅発性神経障害の引き金になるとの報告もあり,術後の循環動態の安定を保つことは重要である。本症例は血圧が低め(SBP90~110mmHg)に推移することが多く,遅発性神経障害の予防のため慎重にリハビリテーションを進める必要があった。結果,著明な筋力の改善はみられなかったが合併症の重症化もなく,疼痛コントロールが可能になったことで早期からのリハビリテーションを進めることができ,ADLの改善が得られた。
【まとめ】急性期での予後予測は難しいが,早期から合併症対策を講じることがADL向上には重要であると考えられた。
【症例】53歳男性。StanfordA型急性大動脈解離・偽腔開存型を発症し,当院で緊急手術(弓部置換術,上行大動脈-左鎖骨下動脈バイパス術)を施行した。術後3日目よりベッドサイドからリハビリテーションを開始した。術後5日目には歩行車で50m歩行可能となったが,術後6日目未明と術後7日目に強い腰背部痛が出現し,対麻痺を発症した。脳脊髄液ドレナージ(以下CSFDと略す)が開始されたが,SpinalShock様症状を呈したため,カテコラミン等の薬物療法も併用された。リハビリテーションが術後8日目から再開となり,術後10日目にCSFD抜去され,術後19日目に一般病棟転棟した。その後もリハビリテーション継続し,最終的には平行棒内で足踏みが監視レベルで可能となった。術後評価の造影CTでは偽腔は血栓化が進み,臓器灌流障害もなく経過良好であった為,術後40日目にリハビリテーション継続目的に転院となった。
【考察】本症例は両下肢の著明な筋力低下(左優位の不全対麻痺)に加え,腰部・下肢・臀部の強い神経障害性疼痛(L5~S1-5領域の異常感覚)や自尿困難を認めており,いわゆる前脊髄動脈症候群とは異なる非定型的で多発性の塞栓症と思われる所見を呈していた。特に臀部に出現する疼痛のコントロールに難渋したことが,本症例のリハビリテーションの進行に大きな影響を与えていた。また,術後の脊髄障害は遅発性神経障害と呼ばれ,術後の低血圧が遅発性神経障害の引き金になるとの報告もあり,術後の循環動態の安定を保つことは重要である。本症例は血圧が低め(SBP90~110mmHg)に推移することが多く,遅発性神経障害の予防のため慎重にリハビリテーションを進める必要があった。結果,著明な筋力の改善はみられなかったが合併症の重症化もなく,疼痛コントロールが可能になったことで早期からのリハビリテーションを進めることができ,ADLの改善が得られた。
【まとめ】急性期での予後予測は難しいが,早期から合併症対策を講じることがADL向上には重要であると考えられた。