[P-KS-08-1] 機械的擦刺激による介入が皮質脊髄路興奮性に及ぼす影響
キーワード：経頭蓋磁気刺激, 触覚刺激, 皮質脊髄路興奮性
【はじめに，目的】
中枢神経疾患患者を対象としたリハビリテーションにおいて，末梢からの感覚入力は，運動療法の効果を促通することが報告されている。感覚入力方法のひとつである機械的触覚刺激による介入は，二点識別覚の改善や感覚入力時の一次体性感覚野の活動を増大することが報告されている（Pleger, et al., 2003）。一方，機械的触覚刺激介入が，運動遂行に関与する皮質脊髄路興奮性に及ぼす影響についての報告は少ない。そこで本研究は，点字様のピンが示指の指腹を左右に移動する機械的擦刺激による介入が皮質脊髄路興奮性に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。
【方法】
対象は健常成人9名（23.8±2.2歳）であった。運動誘発電位（MEP）の計測には磁気刺激装置Magstim 200（8の字コイル）を使用した。刺激部位は左大脳皮質一次運動野手指領域とし，MEPの導出筋は右第一背側骨間筋とした。機械的擦刺激介入は，ピエゾ式機械的触圧刺激装置を用い，20分間実施した。機械的擦刺激は，縦6本の点字様ピンが右示指の指腹を左右に移動するように設定し（1秒間に2往復），on/off時間を1秒/5秒とした。MEPの記録は，介入前（Pre），介入直後（immediately），介入5分後（Post-5 min），10分後（Post-10 min），15分後（Post-15 min），20分後（Post-20 min）とし，各記録時間において15波形を計測した。MEP振幅値は，計測された最大および最小の波形を除いた13波形を加算平均し，その波形の最大最小の差として算出した。統計処理には，反復測定による一元配置分散分析（時間要因）を行った後，Fisher's LSD法を用いた。なお，有意水準は5%とした。
【結果】
統計処理の結果，時間要因に主効果を認め（F（5，48）=4.23，P=0.003），計測されたMEP振幅値（平均値±標準誤差）は，1.00±0.02 mV（Pre），1.15±0.05 mV（immediately），1.21±0.07 mV（Post-5 min），1.24±0.07 mV（Post-10 min），0.96±0.06 mV（Post-15 min），0.99±0.06 mV（Post-20 min）となり，Preに比べPost-5 minおよびPost-10 minにおいて有意な増大が認められた（Post-5 min；p＜0.05，Post-10 min；p＜0.01）。また増大したMEP振幅値は，Post-15 minおよびPost-20 minにおいて有意に低下し，Preとの間に有意な差は認められなかった。
【結論】
本研究により，機械的擦刺激による介入は，皮質脊髄路興奮性を増大させることが明らかとなった。Terumitsu, et al.,（2009）は，空間的な要素を含む触覚刺激により，一次体性感覚野だけでなく一次運動野の活動も認められることを報告している。本研究で用いた機械的擦刺激も同様に，刺激部位が示指の指腹を左右に移動することから，空間的な要素を含む触覚刺激であったと考えられ，介入中に一次運動野が活動したことによって，皮質脊髄路興奮性の増大が引き起こされた可能性が考えられる。よって，機械的擦刺激介入は，運動療法を促通する手法として応用できる可能性が示唆された。
中枢神経疾患患者を対象としたリハビリテーションにおいて，末梢からの感覚入力は，運動療法の効果を促通することが報告されている。感覚入力方法のひとつである機械的触覚刺激による介入は，二点識別覚の改善や感覚入力時の一次体性感覚野の活動を増大することが報告されている（Pleger, et al., 2003）。一方，機械的触覚刺激介入が，運動遂行に関与する皮質脊髄路興奮性に及ぼす影響についての報告は少ない。そこで本研究は，点字様のピンが示指の指腹を左右に移動する機械的擦刺激による介入が皮質脊髄路興奮性に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。
【方法】
対象は健常成人9名（23.8±2.2歳）であった。運動誘発電位（MEP）の計測には磁気刺激装置Magstim 200（8の字コイル）を使用した。刺激部位は左大脳皮質一次運動野手指領域とし，MEPの導出筋は右第一背側骨間筋とした。機械的擦刺激介入は，ピエゾ式機械的触圧刺激装置を用い，20分間実施した。機械的擦刺激は，縦6本の点字様ピンが右示指の指腹を左右に移動するように設定し（1秒間に2往復），on/off時間を1秒/5秒とした。MEPの記録は，介入前（Pre），介入直後（immediately），介入5分後（Post-5 min），10分後（Post-10 min），15分後（Post-15 min），20分後（Post-20 min）とし，各記録時間において15波形を計測した。MEP振幅値は，計測された最大および最小の波形を除いた13波形を加算平均し，その波形の最大最小の差として算出した。統計処理には，反復測定による一元配置分散分析（時間要因）を行った後，Fisher's LSD法を用いた。なお，有意水準は5%とした。
【結果】
統計処理の結果，時間要因に主効果を認め（F（5，48）=4.23，P=0.003），計測されたMEP振幅値（平均値±標準誤差）は，1.00±0.02 mV（Pre），1.15±0.05 mV（immediately），1.21±0.07 mV（Post-5 min），1.24±0.07 mV（Post-10 min），0.96±0.06 mV（Post-15 min），0.99±0.06 mV（Post-20 min）となり，Preに比べPost-5 minおよびPost-10 minにおいて有意な増大が認められた（Post-5 min；p＜0.05，Post-10 min；p＜0.01）。また増大したMEP振幅値は，Post-15 minおよびPost-20 minにおいて有意に低下し，Preとの間に有意な差は認められなかった。
【結論】
本研究により，機械的擦刺激による介入は，皮質脊髄路興奮性を増大させることが明らかとなった。Terumitsu, et al.,（2009）は，空間的な要素を含む触覚刺激により，一次体性感覚野だけでなく一次運動野の活動も認められることを報告している。本研究で用いた機械的擦刺激も同様に，刺激部位が示指の指腹を左右に移動することから，空間的な要素を含む触覚刺激であったと考えられ，介入中に一次運動野が活動したことによって，皮質脊髄路興奮性の増大が引き起こされた可能性が考えられる。よって，機械的擦刺激介入は，運動療法を促通する手法として応用できる可能性が示唆された。