第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題ポスター

日本運動器理学療法学会 一般演題ポスター
運動器P02

2016年5月27日(金) 11:50 〜 12:50 第11会場 (産業振興センター 2階 セミナールームA)

[P-MT-02-3] 人工股関節全置換術患者の術前・術後機能の比較

―年齢階級別に分類して―

中神孝幸1, 新屋順子1, 岩瀬敏樹2 (1.浜松医療センターリハビリテーション技術科, 2.浜松医療センター整形外科)

キーワード:人工股関節全置換術, 若年, 高齢者

【はじめに,目的】

近年では人工股関節全置換術(以下THA)は幅広い年齢層に適応されている。術後のリハビリテーションにおいては年齢を考慮した検討が必要であると考える。よって,本研究の目的はTHA適用患者における若年者群,前期高齢者群,後期高齢者群の術前・術後機能を比較・検討することである。


【方法】

対象は,当院にて2010年10月~2015年10月にTHAが施行され,術前・術後のTimed up & Go test(以下TUG)・10m歩行テストの評価が可能であった患者239例(男性26例,女性213例,年齢32~84歳,中央値64歳),257関節を対象とした。対象期間中に反対側のTHAを施行した患者は18例であった。64歳以下139例を若年者群(以下A群),65歳以上74歳以下82例を前期高齢者群(以下B群),75歳以上36例を後期高齢者群(以下C群)の3群に分類した。調査項目は,術前日整会股関節機能判定基準(以下JOA score)・TUG・10m歩行テスト,術後TUG・10m歩行テスト及びTUG・10m歩行テストの術後変化値(術前値-術後値)とした。術後TUG・10m歩行テストは術後14日前後で計測した。3群の術前機能(JOA score,TUG,10m歩行テスト),術後機能(TUG,10m歩行テスト)及びTUG・10m歩行テストの術後変化値の関係を明らかにするために,Kruskal-Wallis検定を用いて検討し,事後検定としてScheffeの方法を用いて多重比較検定を行い,有意水準を5%未満とした。なお,術後理学療法においては,1病日より患肢全荷重にて離床を開始し順次歩行器・T杖での歩行訓練へと進めた。


【結果】

術前TUGは(A群11.8±4.2秒/B群14.8±6.6秒/C群15.1±4.1),術後TUGは(A群12.2±3.8秒/B群/14.8±6.0秒/C群15.5±3.9),術前10m歩行テストは(A群10.2±3.1秒/B群12.5±4.9秒/C群12.8±4.0),術後10m歩行テストは(A群10.6±3.0秒/B群12.3±4.8秒/C群12.5±2.9)であった。術前・術後TUG・10m歩行テストの比較では,A群とB群,A群とC群で有意差が認められた。3群の術前JOA score,TUG・10m歩行テストの術後変化値の比較では,有意差は認められなかった。


【結論】

B群とC群はA群に比べ,術前・術後それぞれのTUG・10m歩行テストで有意差を認めたものの術後変化値は有意差を認めていない。このことから,高齢者であっても若年層と同様に術後早期の離床を図ることにより,術後短期間で若年層と同程度の運動機能の回復が得られる可能性,高齢者に対するTHAの有用性が示唆された。