第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本運動器理学療法学会 一般演題ポスター
運動器P19

Sat. May 28, 2016 11:40 AM - 12:40 PM 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-MT-19-1] 両側性変形性膝関節症患者の歩行速度低下に関与する膝関節角速度について

清水俊行1,2, 大門守雄1, 菅美由紀1, 椎名祥子1, 松本恵実1, 原良昭3, 河合秀彦1, 北川篤4, 三浦靖史2 (1.兵庫県立リハビリテーション中央病院リハビリ療法部, 2.神戸大学大学院保健学研究科, 3.福祉のまちづくり研究所研究第二グループ, 4.兵庫県立リハビリテーション中央病院診療部)

Keywords:両側性変形性膝関節症, 歩行速度, 膝関節角速度

【はじめに,目的】

変形性膝関節症(以下,膝OA)患者の歩行速度は,健常な中高齢者と比較して低下しているが,その要因として歩行中の左右下肢の運動学的な違いや,歩行速度との関係を検討した報告は少ない。そこで本研究は,歩行中の左右の膝関節角度と角速度を算出し,歩行速度との関係を検討することで両側性膝OA患者の歩行の特徴を明らかにすることを目的とした。


【方法】

対象は両側性膝OAと診断された女性15例30肢(全例内側型,年齢73.4±4.3歳)である。被検者の各足は,膝関節屈伸可動域(以下,ROM)を左右で比較し,ROM制限が大きい側をSevere側(以下,S側),反対側をModerate側(以下,M側)とした。動作課題は約8mの直線歩行路での独歩快適歩行とした。測定は被検者の身体14箇所に赤外線反射マーカーを貼付し,赤外線カメラ7台を用いた三次元動作解析装置(MAC3D system)を使用した。歩行速度は矢状面の動画より床反力計上の平均速度を算出し,歩幅と膝関節角度は赤外線反射マーカーより算出した。評価項目は①歩行速度,②着床初期膝伸展角度,③荷重応答期最大膝屈曲角度,④着床初期から最大屈曲までの膝屈曲角速度(以下,IC-LR角速度),⑤立脚中期最大膝伸展角度,⑥荷重応答期最大屈曲から最大伸展までの膝伸展角速度,⑦前遊脚期膝屈曲角度,⑧立脚中期最大伸展から前遊脚期までの膝屈曲角速度(以下,MSt-PSw角速度),⑨遊脚期最大膝屈曲角度(以下,MSw最大角度),⑩前遊脚期から遊脚期最大屈曲角度までの膝屈曲角速度(以下,PSw-MSw角速度)の10項目である。統計学的方法として,正規性の検定後にS側とM側の評価項目を対応のあるt検定で比較した。また歩行速度とその他の評価項目との相関関係をPearson積率相関係数検定で検討した。有意水準は5%未満とし,解析にはR version 3.2.1を使用した。


【結果】

膝ROMはS側(伸展-11.3±6.3°,屈曲121.7±15.7°)がM側(伸展-5.3±5.0°,屈曲132.3±7.3°)に比べ有意に低値であった(伸展,屈曲p<0.01)。歩行中の歩幅はS側とM側において有意差はみられなかったが,④IC-LR角速度(S側0.61±0.23rad/s,M側0.79±0.35 rad/s,p<0.01),⑧MSt-PSw角速度(S側0.79±0.51 rad/s,M側1.05±0.53 rad/s,p<0.05),⑨MSw最大角度(S側49.7±11.6°,M側57.0±6.6°,p<0.01),⑩PSw-MSw角速度(S側1.51±0.64 rad/s,M側1.96±0.27 rad/s,p<0.01)に有意差がみられた。また歩行速度と相関関係がみられた評価項目は,S側⑧MSt-PSw角速度(r=0.36,p<0.05),S側⑩PSw-MSw角速度(r=0.46,p<0.01)であった。


【結論】

左右の膝ROMに相違のある両側性膝OA患者の歩行の特徴は,全歩行周期ではなく立脚初期や立脚中期以降の膝屈曲角速度,遊脚期最大屈曲角度にのみ有意な左右差がみられることであり,立脚中期以降にS側膝関節の屈曲が行いにくいことが歩行速度の低下に関与していると示唆された。