[P-RS-05-1] 安静時における胸郭形状の特徴が努力呼吸に及ぼす影響
胸郭可動性と呼吸機能に着目して
Keywords:呼吸, 胸郭形状, 左右差
【はじめに,目的】
呼吸運動は,胸郭の各部位における運動軸や呼吸筋の活動により構成されている。安静位の胸郭形状は,上位および下位ともにヒトに共通してみられる非対称性を呈している。この非対称性の増大は呼吸運動における胸郭可動性を著しく制限し,これに応じた呼吸機能低下を引き起こすことが多い。この特徴を理解することは,理学療法において各個人の状態を適切に把握し,効率的な呼吸運動を再建するために重要である。そのため,本研究では3次元画像解析装置と臨床でよく用いられる胸郭評価項目を用いて,安静位における胸郭形状と努力呼吸における胸郭可動性,呼吸機能との関係を明らかにすることを目的とした。
【方法】
健常成人男性11名(平均年齢26.8±3.3歳)を対象とした。安静呼気位の肋骨回旋量は,3次元画像解析装置(QM-3000,トプコンテクノハウス社)を用いて胸郭の水平断面図を上位および下位でそれぞれ作成し,面積を左右で算出した。努力呼吸における胸郭可動性は,剣状突起レベルの胸郭周囲径をテープメジャーにて計測した。安静呼気位に対する最大吸気位,最大呼気位の比率値の差を胸郭可動性とした。呼吸機能検査には電子式診断用スパイロメーター(AS-507,ミナト医科学社)を用い,%肺活量(%VC),%努力性肺活量(%FVC)を測定した。
統計学的処理は安静呼気位の上位,下位胸郭左右断面積比を対応のないt検定を用い,胸郭形状と胸郭可動性の関係,胸郭可動性と呼吸機能の関係をPearsonの積率相関係数を用いて検討した。解析には統計処理ソフトウェア(SPSS18J,IBM社)を使用し,それぞれ危険率5%未満を有意とした。
【結果】
安静呼気位における胸郭水平断面積の左右比率は,上位胸郭で左側が有意に大きく(p<0.01),下位胸郭では右側が有意に大きかった(p<0.01)。胸郭可動性との関係は,安静呼気位における上位,下位胸郭左右水平断面積比の差が増大している例で胸郭可動性が低下する負の相関がみられた(r=-0.63,p<0.05;r=-0.59,p<0.05)。また,胸郭可動性が増大している例では%VC,%FVCが増大する正の相関がみられた(r=0.64,p<0.05;r=0.66,p<0.05)。
【結論】
本研究の検討から,安静位における上位および下位胸郭形状の非対称性増大は,横隔膜が付着する剣状突起レベルの胸郭可動性を制限し,呼吸機能の低下を招くことが示唆された。安静位における胸郭形状の非対称性パターンには個人差が少ないもののこの程度には違いが存在する。この特徴は呼吸運動における肋椎関節の運動軸や呼吸筋の長さ-張力関係を変化させ,これらの要素が個別性として反映したものと考える。このように安静位における胸郭形状と呼吸運動における胸郭可動性,呼吸機能との関係を理解することは,呼吸器をはじめとする多くの疾患に臨床応用できるものと考える。
呼吸運動は,胸郭の各部位における運動軸や呼吸筋の活動により構成されている。安静位の胸郭形状は,上位および下位ともにヒトに共通してみられる非対称性を呈している。この非対称性の増大は呼吸運動における胸郭可動性を著しく制限し,これに応じた呼吸機能低下を引き起こすことが多い。この特徴を理解することは,理学療法において各個人の状態を適切に把握し,効率的な呼吸運動を再建するために重要である。そのため,本研究では3次元画像解析装置と臨床でよく用いられる胸郭評価項目を用いて,安静位における胸郭形状と努力呼吸における胸郭可動性,呼吸機能との関係を明らかにすることを目的とした。
【方法】
健常成人男性11名(平均年齢26.8±3.3歳)を対象とした。安静呼気位の肋骨回旋量は,3次元画像解析装置(QM-3000,トプコンテクノハウス社)を用いて胸郭の水平断面図を上位および下位でそれぞれ作成し,面積を左右で算出した。努力呼吸における胸郭可動性は,剣状突起レベルの胸郭周囲径をテープメジャーにて計測した。安静呼気位に対する最大吸気位,最大呼気位の比率値の差を胸郭可動性とした。呼吸機能検査には電子式診断用スパイロメーター(AS-507,ミナト医科学社)を用い,%肺活量(%VC),%努力性肺活量(%FVC)を測定した。
統計学的処理は安静呼気位の上位,下位胸郭左右断面積比を対応のないt検定を用い,胸郭形状と胸郭可動性の関係,胸郭可動性と呼吸機能の関係をPearsonの積率相関係数を用いて検討した。解析には統計処理ソフトウェア(SPSS18J,IBM社)を使用し,それぞれ危険率5%未満を有意とした。
【結果】
安静呼気位における胸郭水平断面積の左右比率は,上位胸郭で左側が有意に大きく(p<0.01),下位胸郭では右側が有意に大きかった(p<0.01)。胸郭可動性との関係は,安静呼気位における上位,下位胸郭左右水平断面積比の差が増大している例で胸郭可動性が低下する負の相関がみられた(r=-0.63,p<0.05;r=-0.59,p<0.05)。また,胸郭可動性が増大している例では%VC,%FVCが増大する正の相関がみられた(r=0.64,p<0.05;r=0.66,p<0.05)。
【結論】
本研究の検討から,安静位における上位および下位胸郭形状の非対称性増大は,横隔膜が付着する剣状突起レベルの胸郭可動性を制限し,呼吸機能の低下を招くことが示唆された。安静位における胸郭形状の非対称性パターンには個人差が少ないもののこの程度には違いが存在する。この特徴は呼吸運動における肋椎関節の運動軸や呼吸筋の長さ-張力関係を変化させ,これらの要素が個別性として反映したものと考える。このように安静位における胸郭形状と呼吸運動における胸郭可動性,呼吸機能との関係を理解することは,呼吸器をはじめとする多くの疾患に臨床応用できるものと考える。