第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本呼吸理学療法学会 一般演題ポスター
呼吸P05

Sat. May 28, 2016 10:30 AM - 11:30 AM 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-RS-05-2] 呼吸介助法により呼吸仕事量は減少するのか

山根緑1, 間瀬教史2, 村上茂史1, 荻野智之1, 松下和弘1, 髙山雄介1, 野添匡史2, 和田智弘1, 和田陽介3, 道免和久4 (1.兵庫医科大学ささやま医療センターリハビリテーション室, 2.甲南女子大学看護リハビリテーション学部理学療法学科, 3.兵庫医科大学地域総合医療学, 4.兵庫医科大学リハビリテーション医学)

Keywords:呼吸介助法, 呼吸仕事量, コンプライアンス

【はじめに】

呼吸介助法の効果として換気量や呼吸困難感の改善,呼吸仕事量(WOB)の減少が言われている。特に慢性閉塞性肺疾患患者に対しては呼吸介助法によるWOBの軽減が呼吸困難感の改善に繋がるとされ,コンディショニングの一手技として用いられる。しかし,呼吸介助中のWOBを換気力学的に検証した報告はない。本研究の目的は安静呼吸時のWOBと比較して,呼吸介助時のWOBが減少するかを検証することである。


【方法】

対象として被験者は健常成人男性6名,術者を呼吸理学療法経験が10年の理学療法士とした。呼吸介助は被験者を背臥位とし上部胸郭に対して行った。肺気量・流量は流量計(ミナト医科学社製),胸腔内圧(Ppl)は食道バルーン法を用い,差圧トランスデューサー(チェスト社製)にて測定した。胸郭の圧量曲線(PVcurve)は,気流阻止法を用い,最大吸気から最大呼気を含む各肺気量位で,被験者の任意の息止めに合わせシャッターで気流を遮断し測定した。被験者には十分リラックスさせた。安静時,呼吸介助時,気流阻止法時の肺気量,Pplより,圧量ループ(PVloop),胸郭のPVcurveを描いた。PVloopと胸郭のPVcurveよりCampbell diagramを作成し,安静時と呼吸介助時の弾性WOB(吸気弾性WOB,呼気弾性WOB),粘性WOB(吸気粘性WOB,呼気粘性WOB),動的肺コンプライアンス(Cdyn),肺抵抗(RL=(Ppl-肺弾性収縮圧)/流量)を求めた。また,一回換気量(TV),終末吸気肺気量位(EILV),終末呼気肺気量位(EELV)を求め,EILV,EELVは肺活量で除して正規化した値を用いた。


【結果】

TVは安静時に比べ呼吸介助時で有意に増加し,EELVは呼吸介助時で有意に低下した。EILVは安静時と呼吸介助時で変化はなかった。吸気弾性WOBは安静時(0.93±1.14J/min)に比べ呼吸介助時(0.34±0.48J/min)で有意に低下した。吸気時の粘性WOBは安静時(0.46±0.32J/min)と呼吸介助時(0.52±0.49J/min)で変化はなかった。呼気粘性・弾性WOBは安静時(弾性WOB0.07±0.08J/min,粘性WOB0.11±0.13J/min)に比べ呼吸介助時(弾性WOB1.81±0.87J/min,粘性WOB0.97±0.41J/min)で有意に増加した。RLは安静時(1.84±0.73cmH2O/L/s)に比べ呼吸介助時(3.43±1.34cmH2O/L/s)で有意に増加し,Cdynは安静時(0.25±0.15l/cmH2O)に比べ呼吸介助時(0.18±0.08 l/cmH2O)で有意に減少した。


【結論】

呼吸介助時のWOBの特徴は,安静時に比べ呼気時の弾性,粘性WOBは増加し吸気時の弾性WOBが低下していた。呼吸介助法が被検者の胸郭を呼気時に他動的に圧迫することで呼気時に増加するWOBを補助していると仮定すると,この結果は仮説として考えられていた呼吸介助法によるWOBの軽減を支持する結果となった。また,弾性WOBが吸気で低下,呼気で増加したのは呼吸介助によってEELVが低下し胸郭の弾性拡張力が高い肺気量位で換気が行われたためと考えられる。さらに呼気時の粘性WOBが増加したのは,EELVの低下に伴いRLやCdynの変化に反映される気道抵抗や肺組織抵抗などの粘性抵抗が上昇したためと考えられた。