第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題ポスター

日本呼吸理学療法学会 一般演題ポスター
呼吸P08

2016年5月28日(土) 16:00 〜 17:00 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-RS-08-2] 肺切除術患者の6分間歩行テスト時の30秒毎循環応答変化

―術前と術後14日目の比較―

吉永龍史1, 蓬原春樹2, 本田真之介2, 椎木陽啓2, 山本さおり2, 林田祐醍1, 臼間康博3 (1.国立病院機構熊本医療センターリハビリテーション科, 2.国立病院機構宮崎東病院リハビリテーション科, 3.国立病院機構宮崎東病院外科)

キーワード:肺切除術, 6分間歩行テスト, 脈拍数

【はじめに,目的】

肺切除術前後における運動耐容能の変化は,6分間歩行テストが臨床で用いられている。肺切除術後は,肺毛細血管床の減少により,心臓に対して後負荷が増大する。6分間歩行距離(以下,6MD)は,術前値と比較して術後14日目には同程度まで回復するが,術前と比較した術後の歩行負荷中の経時的な循環応答変化については明らかになっていない。

本研究目的は,術前と術後14日目の6分間歩行テスト時の30秒毎循環応答変化の比較とその特徴について明らかにすることとした。

【方法】

対象は,2013年1月から2015年8月までに原発性肺癌に対する肺切除術を施行した42例とした。除外基準は,術後呼吸器合併症の発生,認知症とした。基本属性は,男性22名,女性20名,年齢69.3±10.0歳,BMI 23.2±4.0kg/m2,肺活量2.75±0.66L,1秒率80.1±15.2%であった。術式は,胸腔鏡補助下肺切除術40名,標準開胸2名であった。

方法は,術前と術後14日目(POD14)に米国胸部医学会標準法に準拠し6MDを測定した。その際,患者にパルスオキシメータ(TEIJIN PULSOX-SP)を装着し,30秒毎の脈拍数(PR)とSpO2を開始0秒から10分間記録した。6MDが終了する6分後から10分まで患者は端座位で休憩した。

統計解析は,術前とPOD14間の6MDの比較は,対応のあるt検定を行った。また,10分間測定したPRあるいはSpO2変化それぞれに対しての10分間30秒毎の各要因と,術前およびPOD14の測定時期についての反復測定分散分析を適用後,多重比較Bonferroni法を用いた。なお,いずれも有意水準は両側5%とした。

【結果】

6MDは,術前が390.4±80mとPOD14が377.5±83mで有意差を認めなかった。PR変化は,30秒毎の各要因についてのみ主効果(p<0.001)を認め,術前とPOD14の測定時期および交互作用は有意差を認めなかった。PR変化の特徴は,POD14が開始0秒の74.5±12.9bpmから1分で90.4±14.8bpmまで有意にPRが増加した。PRは1分後から6分(98.4±17.7bpm)まで定常状態となり,一定に経過した。そして,6MD終了後から8分までにかけて有意にPRが76.6±9.3bpmまで低下した。術前のPR変化も同様だった。

SpO2変化は,30秒毎の各要因について主効果および交互作用(p<0.001)を認めたが,測定時期には有意差を認めなかった。SpO2変化の中央値(四分位範囲)の特徴は,術前が開始0秒で97(97-98)%から1分で96(95-97)%まで有意にSpO2が低下したが,その後6分まで定常状態となった。一方で,POD14は,開始0秒で97(97-98)%から2分30秒まで有意に低下し続け94(93-96)%までSpO2が低下し,その後6分まで定常状態となった。術前の同時間と比較してPOD14のSpO2は,2分~6分30秒まで有意にSpO2が低下した。

【結論】

肺切除術後の6分間歩行テスト時の術前とPOD14の循環応答変化は同様であった。また,POD14のSpO2変化は2分30秒まで低下し続けるため,歩行運動負荷時のリスク管理として生活指導に応用できる可能性がある。