[ED-1-3] 剖出を伴う人体解剖学実習による理学療法士教育の現状
理学療法士養成校に対する解剖学教育に関するアンケート調査が最後に行われてから12年が経過し,養成校の教育形態や社会的要請も大きく変化した。よって,理学療法士養成校における近年の解剖学教育の現状を,主に剖出を伴う人体解剖学実習(以下,剖出解剖学実習)に焦点を絞ってアンケート調査した。対象は日本全国の理学療法士養成施設258校299課程である。(公社)日本理学療法士協会のwebアンケートシステムを用いて実施した。回答は204件(回答率68.2%)であった。内,44件でヒトの遺体を用いた全身または部分的な剖出解剖学実習を実施していた。剖出解剖学実習の科目担当責任者は,解剖学教室の教授または准教授である施設が24件,死体解剖資格を有する理学療法課程の専任教員である施設が6件,死体解剖資格を有する非常勤講師である施設が4件あった。死体解剖資格を有しない理学療法課程の専任教員や非常勤講師が担当している施設が5件ずつあった。今後の剖出解剖学実習を実施することに対して,継続性に不安を抱く施設も少なくなかった。一方で,回答した全施設中,様々な条件を踏まえ,剖出解剖学実習が行えることが望ましいと答えた施設が190件(93%)あった。回答した全施設中で死体解剖資格を有する理学療法課程専任教員のいる養成課程は15件,解剖学教室の教授の指導のもと指導の補助に従事した経験のある教員のいる養成課程も64件あった。すなわち,現在剖出解剖学実習を実施していない施設も含めて,養成校専任教員が解剖学教室への負担を最小限にして剖出解剖学実習を指導できる環境が整いつつあると判明した。