第52回日本理学療法学術大会

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日本小児理学療法学会 » 口述発表

[O-SN-02] 口述演題(小児)02

2017年5月12日(金) 12:50 〜 13:50 A6会場 (幕張メッセ国際会議場 中会議室303)

座長:浪本 正晴(九州中央リハビリテーション学院教務部)

日本小児理学療法学会

[O-SN-02-5] 小児在宅訪問リハビリテーションに関する研究の動向
~国内・海外の文献検索による分析~

渡辺 綾1,2, 中野 由子1,2, 五十嵐 大貴3, 齋藤 大地4 (1.社会福祉法人楡の会こどもクリニックハビリテーション課, 2.社会福祉法人楡の会訪問看護ステーションパレット, 3.十勝リハビリテーションセンター医療技術部理学療法科, 4.株式会社はこぶね)

キーワード:小児, 訪問リハビリテーション, 文献研究

【目的】小児・周産期医療の進歩により重篤な疾患や障がいを有して退院し,在宅で過ごす児が増えてきた。また小児から成人期移行後のリハビリテーション資源の確保や保護者の高齢化による通院困難等の課題も指摘されている。このような在宅でのリハビリテーションニーズの拡大により,小児在宅訪問リハビリテーション(以下,小児在宅訪問リハ)を行う訪問看護ステーションや医療機関が増加し,徐々に関連する研究もなされるようになってきた。今回はこれまでに国内・海外で報告された小児在宅訪問リハに関する文献について理学療法・作業療法・言語聴覚療法を含めて調査し,研究動向について明らかにすることを目的とした。

【方法】国内文献は医学中央雑誌,海外文献にはPubMedを選択し,平成28年8月に検索を行った。検索期間は限定せず,医学中央雑誌では[小児][訪問][リハビリテーションOR理学療法OR作業療法OR言語聴覚療法OR言語療法]とし,PubMedでも同様に検索を行い,[訪問リハビリテーション]は[home visit rehabilitation OR in-home rehabilitation]とした。題名・著者・掲載雑誌・出版年・論文種類・シソーラス用語・チェックタグ・抄録を閲覧し,学校・幼稚園訪問や訪問調査,ホームプログラム指導,看護介入のみの文献等,本研究の趣旨と異なるものは除外した。選択した文献より文献数および特集掲載数の推移・著者の職種・文献種類・対象(疾患・年代)について分析した。内容はシソーラス用語を研究方法と[小児]など検索語そのものに関する語を除外した上で[呼吸][摂食・栄養][骨関節・筋肉][褥瘡][姿勢・移動][コミュニケーション][口腔ケア][家族支援][チーム医療][地域連携][制度やサービス][退院支援][生活・住居][生活の質][成人期移行][必要知識][学校・教育][スタッフ育成][その他]に分類した。

【結果】国内文献329件,海外文献0件であった。国内文献について2003年に初めて報告された後は増加傾向にあり,2013年以降は特集掲載が10件を超えた。著者は理学療法士が62件,リハビリテーション関連職種で134件であった。文献種類は解説106件と会議録90件で大部分を占め,原著論文は30件のみであった。対象は重症心身障害者が50件と最も多く,新生児~高齢者の全年代に渡った。内容は[地域連携][制度やサービス][呼吸][家族支援][チーム医療]の順に多かった。

【結論】原著論文化されている研究は少数であり,1994年の小児在宅訪問リハ開始から歴史も浅く,今後の発展が期待される分野と言える。また海外文献はなく,日本が先進的に担う部分が大きいと考えられた。対象や内容は障がいが重度化し,医療・福祉・教育の連携,制度やサービスなど地域での包括的な支援を必要とする小児在宅医療の特徴を表していた。小児在宅訪問リハに従事する理学療法士は増加しており,評価・介入の指針を見出していく必要性は高い。しかし,今回の調査ではエビデンスレベルの評価はできず,さらに論文全体の分析が必要であった。