第52回日本理学療法学術大会

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[P-ED-14] ポスター(教育)P14

2017年5月13日(土) 15:30 〜 16:30 ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本理学療法教育学会

[P-ED-14-4] 当院理学療法部門における転倒・転落事例の検討

竹内 伸行1,2, 藤生 大我2, 松本 昌尚2, 大澤 一樹2 (1.高崎健康福祉大学保健医療学部理学療法学科, 2.本庄総合病院リハビリテーション科)

キーワード:転倒, 転落, 理学療法

【はじめに,目的】理学療法の対象者は筋力低下や関節可動域制限などの機能障害を有し,バランスや歩行などの能力低下を呈する場合も多い。こうした対象に歩行やバランス練習などを行うため,常に転倒や転落のリスクが伴う。転倒・転落の要因は複雑で詳細の把握や分析は容易ではない。本研究は本庄総合病院理学療法部門(以下,当院)で生じた転倒・転落事例を分析し,理学療法士の経験年数と影響度の関連性および発生件数の関連性を明らかにすることを目的とした。

【方法】当院で2006年9月から2015年12月に生じたインシデント74件のうち転倒・転落事例36件を後方視的に分析した。発生した時間帯,場所,関与した理学療法士の経験年数,事例の影響度を抽出し,記述統計で現状把握を行った。加えて,経験年数と影響度および発生件数の関連性をスピアマン順位相関係数(rs)で検討した(有意水準5%)。影響度は国立大学附属病院医療安全管理協議会の影響度分類(以下,影響度)で評価した。この指標は8段階で影響度を評価し,レベル“0”は「エラーがみられたが患者に実施されなかった」,“1”は「患者の実害なし」,“2”は「処置や治療は行わなかった」,“3a”は「簡単な処置や治療を要した」,“3b”は「濃厚な処置や治療を要した」,“4a”は「傷害や後遺症が残ったが機能障害は伴わなかった」,“4b”は「傷害や後遺症が残り機能障害が伴った」,“5”は「死亡」である。順序尺度のためレベル0を0,1を1,2を2,3aを3,3bを4,4aを5,4bを6,5を7にスコア化して処理した。

【結果】発生時間帯は9時台4件,10時台9件,11時台8件,12時台1件,14時台6件,15時台3件,16時台3件,17時台2件であった。場所は理学療法室27件,病棟廊下・階段3件,病室3件,トイレ1件,エレベーター2件であった。状況は歩行練習中が16件,階段昇降練習中と移乗動作中が各5件,歩行および階段昇降以外の日常生活動作練習中が3件,マットおよび車いす上での運動中,治療プラグラムではない歩行中が各2件,バランス練習中,車いす駆動中,姿勢変換中が各1件であった。経験年数は1年目が6件と最多で,3年目,4年目,6年目が各5件,5年目が4件であったが,他の経験年数でも発生していた。経験年数と発生件数はrs=-0.87(p=0.0018)で強い負の相関を認めた。影響度は1が20件,2が14件,3aと3bが各1件であった。影響度と経験年数の間に有意な相関係数は認めなかった(rs=-0.10,p=0.5430)。

【結論】転倒・転落の要因は,対象の属性等の対象者関連要因,経験年数等の理学療法士関連要因,床の状況等の環境要因があると考えられる。理学療法士の経験年数は理学療法士関連要因である。発生件数と経験年数の間に強い負の相関を認め,経験が浅いほど転倒・転落の発生頻度が高いことが示された。一方,影響度と経験年数の間には有意な相関関係を認めず,転倒・転落事例の影響度は業務経験とは関連がないと示唆された。