第52回日本理学療法学術大会

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[P-ED-15] ポスター(教育)P15

2017年5月13日(土) 15:30 〜 16:30 ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本理学療法教育学会

[P-ED-15-2] がん終末期患者に対する理学療法の遂行実態と職場環境の関係
―緩和ケア病棟入院料算定施設に対する全国調査―

加藤 翼1,2, 小澤 温3 (1.新宿区立子ども総合センター, 2.筑波大学大学院人間総合科学研究科博士前期課程, 3.筑波大学人間系教授)

キーワード:緩和ケア, 終末期, アンケート

【はじめに,目的】

わが国では高齢化を背景としてがんに起因した死亡率が増加している。今後も増加が見込まれることから,がん終末期医療の充実は重要な社会的課題である。一方,現行の診療報酬制度では緩和ケア病棟入床後に個別のリハビリテーション料が算定できない為,財政的問題によってリハビリテーションの適応がある患者に十分なサービスが提供されていないといった報告がなされている。また,施設形態や勤務形態によってがん終末期患者と関わる理学療法士の職務遂行実態が大きく異なるものと予測されるが,先行研究のレビューからは職場環境との関係性や施設形態等による比較を試みた研究は見当たらなかった。そこで本研究は全国の緩和ケア病棟入院料算定施設における理学療法士の職務遂行実態と,職場環境(施設形態・勤務形態)や現場管理者の意向と関係について検討することを目的とした。

【方法】

対象は地方厚生局のホームページに公開されている緩和ケア病棟(「緩和ケア病棟入院料」の算定を地方厚生局に申請し,平成28年3月24日時点で認可済みの施設)を有する全国350の病院から,熊本県内の11施設・大分県内の8施設を除いた全331施設のリハビリテーション部門管理者331名。①施設概,②回答者属性・看取りに関する認識,③緩和ケア病棟でのリハビリの概要,④緩和ケア病棟での理学療法の全38項目からなる自記式質問紙表を送付し,回答を得た。

【結果】

返送が得られた施設は331施設中,89施設(回収率:26.9%)であった。セラピストによるリハビリを提供している施設は全83施設で内80施設で理学療法が実施されていた。非実施である6施設中,「がん患者の終末期医療においてリハビリは必要だと思いますか?」の問いに対して必要・どちらかといえば必要と答えたのは5施設,あまり必要ではないが1施設であった。非実施理由については財政的理由,セラピストの人手不足との回答であった。尚,リハ実施施設についてもその財源を緩和ケア病棟入院料,またはボランティア・サービスとしておりいる施設が88%であった。



【結論】

診療報酬やマンパワー上の問題から緩和ケア病棟におけるリハビリの提供状況には差異が大きく,その実践・効果検証については多面的な課題を有していることが明らかとなった。今後,終末期における理学療法の普及・発展に向けては,職場環境に応じた望ましい介入形態や方法について検討してく必要性が示唆された。