第52回日本理学療法学術大会

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日本心血管理学療法学会 » ポスター発表

[P-HT-01] ポスター(心血管)P01

2017年5月12日(金) 15:30 〜 16:30 ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本心血管理学療法学会

[P-HT-01-4] 弁膜症が病態増悪に関与した心不全患者における退院6ヶ月以内の再入院因子の検討
single-center study

三浦 正和1, 村田 和弘1, 大野 豊1, 加藤 聡純1, 上田 亨2, 小田 隆将2, 金本 将司2, 中尾 文昭2, 池田 安宏2 (1.山口県立総合医療センターリハビリテーション科, 2.山口県立総合医療センター循環器内科)

キーワード:心不全, 弁膜症, 再入院因子

【はじめに,目的】非炎症性変化による心臓弁膜症(弁膜症)は増加傾向にあり,JCARE-CARD等による疫学研究では弁膜症を基礎疾患とした心不全(HF)は虚血に次ぎ多くなっている。今回,弁膜症が病態増悪に関与したHF患者の退院6ヶ月以内の再入院因子を明確にすることを目的とした。【方法】平成24年10月~平成27年5月までに心臓弁膜症を合併したHFで初回入院した86名(再入院群22名,非再入院群64名,年齢79.1±10.6歳)を対象とした。手術適応と判断した患者,退院後1か月以内に弁置換術を実施した患者は除外した。研究デザインは後ろ向きコホート研究とした。従属変数を退院6ヶ月以内の再入院の有無,調査項目として患者背景因子は年齢,性別,世帯,Body Mass Index,入院期間,心不全の病態・心機能はClinical Scenario・入院時New York Heart Association・Left Ventricular Ejection Fruction・Left Ventricular Diastolic diameter・Inferior Vena Cava,採血値は退院時Cre・eGFR・Na・K・BUN・Hb,最大値Na・K・Cre・BUN,入院時BNP,退院時内服薬・急性期治療薬はループ利尿薬・ACE-I・ARB・βB・ALDB・DOB・DOA使用の有無,合併症は肺うっ血・せん妄・肺炎・嚥下障害の有無,併存疾患は不整脈・CKD stage,糖尿病・心筋症・虚血・高血圧・COPD・PMの有無,日常生活動作能力(ADL能力)はDPCのADLスコア(平地歩行,移乗等10要因)とし診療録より後方視的に情報を収集した。再入院の有無により2群間比較を行いp<0.20の要因を独立変数とした。Pearsonの積率相関係数またはSpearmanの順位相関係数を使用し多重共線性に留意するためr>0.80の要因は除外した。多重ロジスティック回帰分析を行い再入院の有無を決定する要因を抽出した。有意水準は5%未満とした。【結果】単変量解析の結果14要因が独立変数として選択され,Spearmanの順位相関係数を使用した結果,退院時Creは退院時eGFR(r=-0.90,p<0.01)と最大値Cre(r=0.85,p<0.01),更衣は整容(r=0.81,p<0.01)と多重共線性を認めたため2要因を除外した。多重ロジスティック回帰分析の結果,CKD stage(OR 1.87,95%CI 1.25-2.80,p<0.01),平地歩行(OR 3.10,95%CI 0.95-10.19,p<0.01)が抽出された。【結論】弁膜症が病態増悪に関与したHF患者の再入院因子はCKD stageと平地歩行能力となった。CKD stageはeGFRから算出され腎機能障害を反映している指標である。またDPCのADLスコアの平地歩行能力は歩行可否のみを判断したカテゴリー変数のため詳細な歩行能力は評価できていない。心不全の急性増悪因子は,高齢,内服アドヒアランスの低下,骨格筋力低下,腎機能障害が重要とされており,弁膜症が病態増悪に関与した心不全患者においても同様の結果を得た。また平地歩行能力に関して評価指標の再考は必要だが歩行能力が高い患者が再入院し易い結果となった。従って,腎機能障害の程度を把握し,活動性が維持された患者に対して過負荷に留意した運動指導が必要である事が考えられる。