第52回日本理学療法学術大会

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日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT) » ポスター発表

[P-KS-26] ポスター(基礎)P26

2017年5月13日(土) 12:50 〜 13:50 ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT)

[P-KS-26-3] 異なるストレッチング強度による抵抗トルク,Stiffnessの経時変化

山内 渉1, 宮津 真寿美2, 木山 喬博2 (1.岐阜県立多治見病院リハビリテーション科, 2.愛知医療学院短期大学専攻科リハビリテーション科学専攻)

キーワード:ストレッチング強度, ストレッチング効果の持続, 筋柔軟性

【はじめに,目的】

ストレッチング(St)後の筋柔軟性変化は,体位,St持続時間,St強度などが関与する。その中で,St強度の違いによる筋柔軟性変化やその経時変化を調査した報告は少なく,筋柔軟性を向上しその効果を長く持続させる最適なSt強度は明らかではない。本研究の目的は,異なるSt強度で,ハムストリングス(Ham)に対して保持時間120秒のStを行い,筋柔軟性変化とその経時変化を明らかにすることである。

【方法】

対象は健常男子12名(19.9±0.9歳)の右Hamとし,3条件のSt強度を3日に分けて行った。Stと筋柔軟性の評価にはBiodex System3を用い,肢位は端坐位にて股関節約120度屈曲位とした。Stを行う強度は,角速度2度/秒で他動的に膝関節を伸展し伸張痛が生じる角度であるR100と,開始角度からR100の80%の角度(R80),60%の角度(R60)の3条件とした。開始角度は,3条件ともR100から50度屈曲位とした。Stは,開始角度からそれぞれの強度まで角速度2度/秒で伸展し,120秒保持した。なおSt中の筋収縮の有無を確認するために,大腿二頭筋にEMGの電極を装着した。筋柔軟性の指標は,抵抗トルクとStiffnessを用いた。抵抗トルクは,角速度2度/秒で,開始角度からR100の50%の角度まで膝関節を伸展し,50%の角度の抵抗トルク値を採用した。またStiffnessは,開始角度から50%の角度までの抵抗トルク変化を関節角度変化で除した値とした。抵抗トルクの測定は,Stの10分前に前評価(Pre),St直後(Post),5分,10分,15分,30分に実施し,Pre前に最大随意収縮(MVC)時のEMGを測定した。抵抗トルクとStiffnessのそれぞれ,評価時間の間,減少量(PreとPostの差)のSt強度の間の比較にはANOVAを実施し,有意差が認められた場合は多重比較検定を行った。

【結果】

St中のEMG積分値は,全ての強度でMVC時の1%以下であった。抵抗トルクの経時変化は,全てのSt強度で,Preと比較し,Post,5,10,15,30分で有意に減少し,R80,100では,Postと比較し,5,10,15,30分で有意に増加した。Stiffnessは,R60では,有意な差はなく,R80,100で,Preと比較し,Post,5,10,15,30分で有意に減少した。抵抗トルクの減少量は,R60で1.6±0.8Nm,R80で1.8±0.9Nm,R100で2.5±1.4Nm,Stiffnessの減少量は,R60で0.02±0.04Nm/度,R80で0.04±0.04Nm/度,R100で0.05±0.04Nm/度であり,どちらもSt強度間で有意な差はなかった。

【結論】

全てのSt強度で,抵抗トルクがPreと比較しPost~30分で減少していることから,Stによる筋柔軟性の向上は30分持続することがわかった。またStiffnessはR60に変化はなく,R80,100のSt後で減少したこと,さらに有意差はなかったが,抵抗トルク,Stiffnessの減少量の平均値が,St強度が高いほど大きいことから,St強度が高いと筋柔軟性がより変化する可能性がある。本研究の課題として,少ないサンプル数,主観に基づいたR100の設定,測定環境条件の不統一などが挙げられる。