[O-046] ReoGo-Jを用いた座位リーチ動作にて体幹・骨盤帯に対し徒手介入することで歩行能力が向上した一症例
Keywords:歩行、座位リーチ動作、通所リハビリテーション
【はじめに・目的】
近年,脳卒中患者に対するロボット療法の有用性が示唆されており,当院でもReoGo-Jを導入している.今回,歩行と上肢機能改善を希望した慢性期片麻痺患者1例に対し,ReoGo-J を用いた座位リーチ動作にて体幹・骨盤帯に対し徒手介入することで,歩行機能の改善に達した症例を報告する.
【方法】
症例は80歳代男性,要介護2,X-23年に右視床出血を発症し左片麻痺を呈し,X-5年に週2回90分の通所リハビリを開始した.BRST左Ⅴ-Ⅴ-Ⅴ,感覚は表在軽度鈍麻,深部中等度鈍麻.歩行観察の結果から,左肩関節外転し体幹を対側へ側屈する姿勢をとり,体幹と骨盤帯回旋の分離が乏しく,前方への推進力が低下していた.症例のニーズは,姿勢を維持して歩きがよくなりたいであった.研究方法はシングルケースデザインABA法を用いて,介入月をY月とし,3ヶ月間(Y-1月〜Y+2月)介入した.介入方法はA期間(Y−1月〜Y月,Y+1月〜Y+2月),従来の通所リハビリでの理学療法と自主トレーニングを1ヶ月間実施した.次にB期間(Y月〜Y+1月),ReoGo-J を30分程度週1回と,従来の理学療法と自主トレーニングを1ヶ月間実施した.訓練モードは自動運動軌道アシストモードで前方リーチ,前上方リーチを反復できるプログラムを用いた.実施中は,徒手にて骨盤前傾時に体幹伸展の介助,同様に骨盤前傾時股関節の代償を抑制し,足部重心移動時足底全体を接地するように促した.動作学習を促し,徒手による介助の回数を減らした.評価項目は10m歩行テスト(以下10MWT),麻痺側のファンクショナルリーチテスト(以下FRT)を1ヶ月毎に測定した.
【結果】
結果はY−1月→Y月→Y+1月→Y+2月の順で示す.10MWTの歩行時間は10.0→10.2→8.2→8.6秒,歩数は23→24→21→21歩.FRTは35.0→32.0→31.0→31.0cm.ReoGo-J 使用後歩行能力が改善し,その後も歩行能力の維持はなされた.
【結論】
今回ReoGo-Jの使用にてリーチ時の運動方向の制御が可能となり,姿勢や代償運動に対する徒手的なアプローチが簡便に行えるようになり,より客観的な動作分析が治療中に可能であった.歩行能力は,ReoGo-J介入前後で歩行速度は0.16m/sの改善が見られ,これは慢性期脳卒中患者のMCIDの0.14m/sを満たす値となり,生活期における歩行能力の改善を示す結果となった.大田尾らは骨盤前傾運動に作用する筋群は,姿勢制御や立位,歩行動作に関わる筋群であると述べられており,ReoGo-Jを使用した反復した座位リーチ運動にて同様の効果があり,歩様が改善したと考える.FRTの改善が見られなかった要因として,江連らによると座位前方リーチ動作は肩甲骨外転可動域の改善はするが,FRTとの関係性はなかったと述べている.今後の課題として,関節可動域,筋力,筋緊張などの機能評価を欠いており,定期的な評価指標として継時的な効果測定をしていく必要がある.
【倫理的配慮、説明と同意】
本研究はヘルシンキ宣言に基づく倫理的原則に配慮し,対象者に研究の目的,方法を説明し同意を得る.また,鎌倉リハビリテーション聖テレジア病院生命倫理委員会の承認を得た.
近年,脳卒中患者に対するロボット療法の有用性が示唆されており,当院でもReoGo-Jを導入している.今回,歩行と上肢機能改善を希望した慢性期片麻痺患者1例に対し,ReoGo-J を用いた座位リーチ動作にて体幹・骨盤帯に対し徒手介入することで,歩行機能の改善に達した症例を報告する.
【方法】
症例は80歳代男性,要介護2,X-23年に右視床出血を発症し左片麻痺を呈し,X-5年に週2回90分の通所リハビリを開始した.BRST左Ⅴ-Ⅴ-Ⅴ,感覚は表在軽度鈍麻,深部中等度鈍麻.歩行観察の結果から,左肩関節外転し体幹を対側へ側屈する姿勢をとり,体幹と骨盤帯回旋の分離が乏しく,前方への推進力が低下していた.症例のニーズは,姿勢を維持して歩きがよくなりたいであった.研究方法はシングルケースデザインABA法を用いて,介入月をY月とし,3ヶ月間(Y-1月〜Y+2月)介入した.介入方法はA期間(Y−1月〜Y月,Y+1月〜Y+2月),従来の通所リハビリでの理学療法と自主トレーニングを1ヶ月間実施した.次にB期間(Y月〜Y+1月),ReoGo-J を30分程度週1回と,従来の理学療法と自主トレーニングを1ヶ月間実施した.訓練モードは自動運動軌道アシストモードで前方リーチ,前上方リーチを反復できるプログラムを用いた.実施中は,徒手にて骨盤前傾時に体幹伸展の介助,同様に骨盤前傾時股関節の代償を抑制し,足部重心移動時足底全体を接地するように促した.動作学習を促し,徒手による介助の回数を減らした.評価項目は10m歩行テスト(以下10MWT),麻痺側のファンクショナルリーチテスト(以下FRT)を1ヶ月毎に測定した.
【結果】
結果はY−1月→Y月→Y+1月→Y+2月の順で示す.10MWTの歩行時間は10.0→10.2→8.2→8.6秒,歩数は23→24→21→21歩.FRTは35.0→32.0→31.0→31.0cm.ReoGo-J 使用後歩行能力が改善し,その後も歩行能力の維持はなされた.
【結論】
今回ReoGo-Jの使用にてリーチ時の運動方向の制御が可能となり,姿勢や代償運動に対する徒手的なアプローチが簡便に行えるようになり,より客観的な動作分析が治療中に可能であった.歩行能力は,ReoGo-J介入前後で歩行速度は0.16m/sの改善が見られ,これは慢性期脳卒中患者のMCIDの0.14m/sを満たす値となり,生活期における歩行能力の改善を示す結果となった.大田尾らは骨盤前傾運動に作用する筋群は,姿勢制御や立位,歩行動作に関わる筋群であると述べられており,ReoGo-Jを使用した反復した座位リーチ運動にて同様の効果があり,歩様が改善したと考える.FRTの改善が見られなかった要因として,江連らによると座位前方リーチ動作は肩甲骨外転可動域の改善はするが,FRTとの関係性はなかったと述べている.今後の課題として,関節可動域,筋力,筋緊張などの機能評価を欠いており,定期的な評価指標として継時的な効果測定をしていく必要がある.
【倫理的配慮、説明と同意】
本研究はヘルシンキ宣言に基づく倫理的原則に配慮し,対象者に研究の目的,方法を説明し同意を得る.また,鎌倉リハビリテーション聖テレジア病院生命倫理委員会の承認を得た.