第6回日本地域理学療法学会学術大会

講演情報

ポスター

ポスター2

[P] ポスター2

2019年12月14日(土) 16:30 〜 17:30 ポスター会場 (東館3階 D会議室)

[P-31] 介護予防ボランティアの活動回数がボランティア自身の心身機能へ与える影響

*積山 和加子1、田中 聡1、佐藤 勇太1、飯田 忠行1、香川 広美2、古西 恭子3、久留飛 高成2 (1. 県立広島大学 保健福祉学部 理学療法学科、2. 尾道市役所 福祉保健部 高齢者福祉課、3. 尾道市役所 瀬戸田支所 住民福祉課)

キーワード:介護予防ボランティア、シルバーリハビリ体操指導士、自助

【はじめに・目的】
近年の介護予防事業では高齢者同士が互いに支え合う住民主体の地域づくりに取り組む自治体が増えており,広島県尾道市では平成25年度からシルバーリハビリ体操事業を展開している。我々は尾道市のシルバーリハビリ体操指導士(以下,指導士)や体操教室参加者に対する調査を実施し,指導士は体操教室参加者に比べ,運動機能や生きがい感が高いことを明らかにした(積山ら,2018)。しかし,指導士としての活動が指導士自身の心身機能に与える影響についてまでは十分な検討が行えなかった。 そこで本研究では,指導士に対して調査を行い,指導士としての活動回数が指導士自身の心身機能に与える影響について検討を行った。 【方法】
対象は本研究に対して協力が得られた尾道市の指導士101名(男性11名,女性90名)とした。調査内容は運動機能評価として,握力,開眼片脚立位保持時間,Timed up and go test,30秒椅子立ち上がりテスト(以下,CS-30)を測定した。健康心理学的評価として,気分・不安障害の簡易スクリーニング調査票K6日本語版,高齢者の生きがい感評価K-Ⅰ式(以下,K-Ⅰ式),気分プロフィール評価POMS2®短縮版を実施した。また,尾道市が毎月集計している指導士毎の体操教室開催回数から1年間分を抽出し,性別毎に体操教室開催回数と各調査項目との関連についてSpearmanの順位相関係数を用いて検討した。さらに女性群では,体操教室開催回数の中央値を求めた上で中央値以上の群と中央値未満の2群に分け,各調査項目について正規性を認めた場合はt検定,正規性を認めない場合はMann-Whitney検定を用いて2群の差を検討した。
【結果】
男性群の体操教室開催回数の中央値は45回で,体操教室開催回数と各調査項目について関連は認めなかった。女性群の体操教室開催回数の中央値は24回で,24回以上が46名,23回以下が44名となった。女性の体操教室開催回数と各調査項目について女性群全体では関連は認めなかったが,24回以上群においてPOMS2®短縮版の「怒り~敵意」と負の相関関係(r=-0.30,p=0.048)を認め,23回以下群では年齢と正の相関関係(r=0.42,p=0.007)を認めた。女性の2群間の比較では,CS-30とK-Ⅰ式の「自己実現と意欲」が23回以下群に比べ24回以上群で有意に高かった。
【結論】
女性群については活動回数の中央値で2群に分けた結果,24回以上群においてPOMS2®短縮版の「怒り~敵意」と負の相関関係を認め,活動回数が増加するほどネガティブな感情が低下する傾向を示した。指導士養成講習会受講生に対する調査(積山ら,2017)においても,受講後「怒り~敵意」が有意に低下しており,介護予防ボランティア活動によってボランティア自身の心理的ストレスが軽減する可能性が示された。男性群については活動回数と調査項目との関連性は認めなかったが,対象者数が少なかったため今後は対象者を増やして再検討する必要がある。

【倫理的配慮、説明と同意】
本研究は演者所属の研究倫理委員会の承認を受けた(承認番号:第17MH067号)。対象者には事前にインフォームド・コンセントを取得し,自由意志に基づき本人の署名入りの同意文書に記載してもらい参加への同意を得た。同意されない場合や途中で参加を取りやめた場合であっても,参加の有無によって不利益を受けることは一切ないことを説明した。