The 27th Kinki Association for Clinical Engineers

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一般演題

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COVID-19②

座長:紙崎 絢(京都大学医学部附属病院 医療器材部)、楠本 繁崇(大阪大学医学部附属病院)

[10-05] ECMOガス交換膜の精緻な細孔構造解析とSARS-CoV-2漏出リスクの解明

*定野 和憲1、福田 誠1、古谷  知也1、竿本 仁志2、酒井 清孝3、森 智博2 (1. 近畿大学 生物理工学部 医用工学科、2. 和歌山県工業技術センター、3. 早稲田大学)

【背景・目的】 

本邦で補助循環・補助呼吸型ECMOとして認証されている膜型人工肺を用いたCOVID-19重症患者の治療において、ガス側出口ポートからの液体サンプルからSARS-CoV-2の陽性が確認された[1]。これは、SARS-CoV-2が患者血液中からガス(中空糸膜内腔)側へ人工肺膜の細孔を透過し、ガス側出口ポートへ排出されたためと推察される。しかし、これまでガス交換膜でのウィルスなど固体の透過性は検証されておらず、また最近のECMO膜の細孔構造に関する知見はない。

そこで本研究では、本邦で使用されているECMO膜の細孔構造を走査型プローブ (SPM) および電界放出型電子顕微鏡 (FE-SEM) を用いて解析し、SARS-CoV-2のECMOシステムからの漏出リスクを膜工学の観点から検証する。



【方法】

本邦で代表的なoxia® ACF (JMS Co., Ltd., Hiroshima, Japan, Sample A) 、MERA NHP (SENKO MEDICAL INSTRUMENT Mfg. Co., Ltd., Tokyo, Japan, Sample B) およびBIOCUBE® (Nipro Co., Ltd., Tokyo, Japan, Sample C) を対象とした。SPM (NanoNavi/E-sweep (Seiko Instruments Co., Ltd., Hitachi High-Tech Science Co., Ltd., Tokyo, Japan)) 及びFE-SEM (JSM-7610F, Jeol Ltd., Tokyo, Japan)) 用いて、膜の内表面、外表面および横断面を撮像した。撮像した画像から、ImageJ (NIH)を用いて細孔直径(長軸、短軸)、細孔面積、開孔率などの膜細孔構造特性を計測した。



【結果・考察】

FE-SEM画像の解析結果から、oxia® ACFの細孔直径は〈内表面152±50 nm、外表面122±51 nm〉、メラNHPエクセランHPO-23WH-Cでは〈内表面166±51 nm、外表面86±27 nm〉、BIOCUBE®では〈内表面78±27 nm、外表面77±25 nm〉であった。SARS-CoV-2の直径は50 - 200nm と言われており、oxia® ACFおよび BIOCUBE®ではそれよりも大きな細孔が存在するため膜透過リスクがあると考えられる。また、MERA NHPにおいても膜外表面のシリコーン膜が剥離した場合には、SARS-CoV-2が膜透過する可能性がある。



【結言】

FE-SEMを用いた直接顕微鏡観察法により、ECMO膜の細孔構造を明らかにした。3種類の膜はそれぞれ独特な細孔構造であり、膜内表面と外表面の細孔構造は全く異なる異方性構造であった。そして、膜透過理論により、SARS-CoV-2が膜を透過する可能性があることを明らかにした。


Ogawa T, et al.: SARS-CoV-2 Leakage from the Gas Outlet Port during Extracorporeal Membrane Oxygenation for COVID-19. ASAIO J. 2021.