第33回大阪府理学療法学術大会

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Web Poster

[P-11] P-11

Sun. Jul 11, 2021 8:45 AM - 3:30 PM Web Poster:P-11 (webポスター会場)

座長:徳久 謙太郎(友紘会総合病院)、前田 将吾(関西医科大学附属病院)

[P-11-01] 弱視を既往にもつ左被殻出血症例に対する理学療法経験~体性感覚入力に着目して~

*坊 慎太郎1、松村 彩子1 (1. JCHO星ヶ丘医療センター)

【症例紹介】

今回, 弱視を既往にもつ左被殻出血症例を担当した. 本症例に対し, 体性感覚入力に着目して介入した結果, 独歩獲得に至ったので報告する. 症例は左被殻出血を呈した50歳代男性.既往歴はレーベル遺伝性視神経症による弱視, 病前のADLは自立.

【評価とリーズニング】

発症14日目でFIMは26点. プッシングを認め立位保持困難, 歩行は重度介助を要した. SIAS-Motorは右(1-1C-2-2-3), 右下肢の感覚は表在, 深部共に重度鈍麻であった. 姿勢筋緊張は右体幹と右上下肢は低緊張, 左下肢は高緊張を呈した. TCT(Trunk Control Test)は74点, SCP(Scale for Contraversive Pushing)は4.25点, BBS(Berg Balance Scale)は4点, FAC(Functional Ambulation Categories)は0であった. このことから, 右体幹筋の姿勢筋緊張低下, 右上下肢の運動麻痺によって立位における身体の垂直定位が難しいと考え, 体幹の抗重力伸展活動と脊柱の分節運動を促通し, 姿勢の垂直定位を促した. 発症21日目でプッシングは消失し, 立位保持可能となったが, 左下肢荷重が優位であった. 歩行は軽度~中等度介助を要した. SIAS-Motorは右(2-2-3-3-3), 感覚は表在, 深部共に重度鈍麻だが, 右足底部への接触刺激を痛みとして知覚するようになった. 重心動揺検査は立位でのロンベルグ率0.849, マット上立位でのロンベルグ率1.43, 荷重バランス右27.4%, 左72.6%であった. このことから, 右下肢の重度感覚障害による左右足底の体性感覚情報の偏りが左下肢のプッシングを惹起していると考えた. また, 重心動揺検査で立位でのロンベルグ率よりもマット上立位でのロンベルグ率の方が大きいことから, 本症例は視覚よりも体性感覚への重みづけが強いと推測し, 右下肢への体性感覚入力に着目したアプローチが必要と考えた.

【介入と結果】

介入は, 右足部に対して徒手的に体性, 固有感覚入力を行い, 左右足底の体性感覚情報の偏りの改善を図った. 更に, 起立動作やつま先立ち, 片脚立位バランス課題を行い, 体性, 固有感覚情報と前庭感覚情報との統合を促した. 発症44日目でFIMは93点. SIAS-Motorは右(3-4-4-4-4), 感覚は表在, 深部共に軽度~中等度鈍麻となり, 足底部の痛みは消失した. 右体幹, 右上下肢の低緊張は改善した. 歩行は独歩見守りとなった. TCTは100点, BBSは48点, FACは3となり, 発症75日目で屋外独歩自立し, 自宅退院した.

【結論】

本症例は, 既往歴から姿勢定位やバランス保持において体性感覚情報への重みづけが強いと考え, 体性感覚情報に着目した介入を行った. その結果, 右足底への接触刺激を患者自身が知覚, 認知し, 右下肢への認識が高まったことで右下肢への荷重が可能となり独歩獲得に至ったと考える.

【倫理的配慮、説明と同意】
対象者には口頭にて説明し書面にて同意を得た. また, 本発表は当院倫理委員会にて承認を得ている (承認番号HG-IRB2119).

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