第33回大阪府理学療法学術大会

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Web Poster

[P-11] P-11

Sun. Jul 11, 2021 8:45 AM - 3:30 PM Web Poster:P-11 (webポスター会場)

座長:徳久 謙太郎(友紘会総合病院)、前田 将吾(関西医科大学附属病院)

[P-11-02] Lateropulsionに対して前庭機能に着目し、自転車走行を獲得した症例。

*田中 領1、辻中 椋1 (1. 泉佐野優人会病院)

【症例紹介】40代男性。発症当日A病院にて左延髄外側梗塞と診断。第34病日に当院へ転院となり、同日より理学療法を開始。本症例は職場復帰を目指しており、通勤手段として自転車走行能力の獲得が必要であった。

【評価とリーズニング】初期評価でMini‐BESTest(以下MBT)は22点で減点項目は片脚・側方ステップ・閉眼フォーム・頸部回旋・ターン。片脚立位は両側共に実施困難。Gaze Stabilization Test(以下GST)では頸部回旋が拙劣であった。閉眼歩行にて星形歩行陽性。BLSは歩行にて突進現象認め2点。自転車走行の可否は先行報告を参考に片脚立位10秒をカットオフ値としたため、初期では実施困難であった。脳画像より前庭神経核、下小脳脚に高信号を認めた。下小脳脚は固有感覚と出力を伴う前庭感覚の入力を統合することに関係し運動出力を伴う入力を統合しており、姿勢・バランスにおいて重要であるとされている(Eggers et al . 2009)。前庭神経核は前庭動眼反射や前庭脊髄反射などの平衡機能に関与し、眼球運動と身体の平衡を調節する。本症例は歩行動作において左LR~MStにかけてLateropulsion(以下LP)が出現し、頸部回旋や、視線誘導に伴いLP症状の増強を認めた。前庭機能障害により、頭位変化に対する眼球コントロールが困難となり、SVVが偏倚するとされており(Dieterich et al . 1992)、歩行バランス低下へ影響していると考えた。

【介入と結果】理学療法として、頸部回旋や視線誘導を伴う立位や歩行を実施した(Morimoto et al . 2011)。また、動揺時の身体傾斜に対して、壁面を利用した体性感覚での知覚フィードバックを用いた。最終評価ではMBTは側方ステップ、頸部回旋、ターンが可能となり26点。片脚立位は両側共に10秒以上可能。GSTでは初期と比較すると頸部回旋が円滑となった。閉眼歩行では星形歩行陰性。BLSは0点。自転車走行は頸部回旋によるふらつきが軽度残存したが、ハンドル操作により自制内であった。

【結論】歩行バランス低下の要因として前庭機能障害とそれによるLPの出現を考えた。前庭機能への直接的なアプローチを実施したことで、GSTにおいて頸部回旋が円滑となり、眼球と頸部の協調性が向上した。また、星形歩行陰性・BLSは0点となり立位における前庭機能障害が改善し、MBTにおいても点数が向上した。上記より、前庭感覚による四肢制御機能が向上した可能性がある。このことから、歩行時のLPが消失し屋外歩行が自立。また、片脚立位が10秒以上可能となったことで自転車走行が安全に実施可能となり通勤手段の獲得に至った。尚、今回はSVVの評価が行えておらず、SVVの影響を考察するに至らなかった。今後はバケツテスト等を用いてSVVの評価を行い、より効果的な治療手段を選択していく必要がある。
【倫理的配慮、説明と同意】ヘルシンキ宣言の理念に基づき、対象者の人権配慮には十分な配慮を行い、症例報告の目的を十分に理解が得られるよう説明と同意を行った。

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