[P-11-03] 両側小脳梗塞を呈し左優位に失調症状が生じた症例 ~歩行能力向上を目指して~
【症例紹介】
50代女性, 嘔気、呂律困難が出現し受診.MRIにて広範な左小脳半球の梗塞と虫部や右小脳半球にも梗塞巣を指摘され入院.第35病日リハビリ目的に当院転院.
【評価とリーズニング】
入院時,MMT(右/左)は体幹屈曲3,体幹回旋(3/3),股関節伸展(3/3),股関節外転(4/3)であった.四肢失調症状は軽度の企図振戦,反復運動障害を左優位に認め,体幹にも軽度の失調を認めた.SARAでは歩行6点,立位2点,座位0点,言語障害1点,指追い試験0点,鼻指試験1点,手回内外試験1点,踵脛試験2点の合計13点,FBS41点.FIM運動項目68点.歩行は歩行器軽介助, 独歩は体幹の動揺が強く,恐怖感もあり,体幹の中間位保持に中等度介助が必要であった.歩容は,運動失調により左IC時に接地位置が定まっておらず,足底接地であった.LR~TStにかけて骨盤側方動揺・後方回旋,反張膝を認めた.左遊脚期には軽度の分回しを認めた.右IC時の接地位置は良好だが,右MSt~TStでは骨盤動揺,反張膝を認めた.
【介入と結果】
介入当初,軽度の体幹失調に対しCKCで体幹筋力増強を中心に行い,体幹の安定性向上が図れ,介入から3週間で,立位の体幹失調改善を認めたため,起立や歩行練習の比重を増加させた.体幹と股関節の協調性を促すために膝立ち位でステップ練習を行い,下肢の複合的な運動で筋力増強を図るために起立練習を行った.歩行練習では両下腿遠位に重錘を装着し感覚入力を行った後,重錘を外し内在的フィードバックを用いて下肢の振り出しや体幹の姿勢保持の運動学習を図った.
第74病日,SARAでは歩行4点,立位1点,座位0点,言語障害1点,指追い試験0点,鼻指試験1点,手回内外試験1点,踵脛試験2点の合計10点,FBS43点,FIM運動項目は83点に向上を認めた.体幹と股関節の協調性向上,下肢運動時の振戦と体幹失調改善を認めた.歩容は,左IC時の接地位置は良好となりLR~TStでの骨盤側方動揺・後方回旋の軽減,反張膝は消失し,歩行の安定性向上を認めた.病棟内移動は歩行器歩行自立となり,独歩は軽介助で可能となった.
【結論】
本症例は広範な小脳梗塞によって左優位の四肢運動失調,体幹にも失調症状を認め,立位以降で体幹・下肢の筋力低下により姿勢制御が困難であった.歩行周期における立脚期で下肢の筋収縮,筋出力の程度やタイミングが障害されることで歩行の安定性低下を認めたため,まず体幹に対するアプローチを中心に行い,四肢運動時の動揺の改善を図った.歩行練習では,重錘による負荷調整で下肢の筋収縮の再学習を図った.その結果,体幹と股関節の協調性向上,下肢の運動時振戦の改善を認め,歩行の安定性が向上し歩行器歩行自立,独歩の介助量軽減に至ったと考える.本症例を通して小脳性運動失調には,重錘負荷による筋紡錘への感覚入力や体幹の安定性向上を図ることが四肢随意運動時の協調性の再学習に対して有効であると考えられた.
【倫理的配慮、説明と同意】
本発表について,患者には説明のうえ同意を得た.
50代女性, 嘔気、呂律困難が出現し受診.MRIにて広範な左小脳半球の梗塞と虫部や右小脳半球にも梗塞巣を指摘され入院.第35病日リハビリ目的に当院転院.
【評価とリーズニング】
入院時,MMT(右/左)は体幹屈曲3,体幹回旋(3/3),股関節伸展(3/3),股関節外転(4/3)であった.四肢失調症状は軽度の企図振戦,反復運動障害を左優位に認め,体幹にも軽度の失調を認めた.SARAでは歩行6点,立位2点,座位0点,言語障害1点,指追い試験0点,鼻指試験1点,手回内外試験1点,踵脛試験2点の合計13点,FBS41点.FIM運動項目68点.歩行は歩行器軽介助, 独歩は体幹の動揺が強く,恐怖感もあり,体幹の中間位保持に中等度介助が必要であった.歩容は,運動失調により左IC時に接地位置が定まっておらず,足底接地であった.LR~TStにかけて骨盤側方動揺・後方回旋,反張膝を認めた.左遊脚期には軽度の分回しを認めた.右IC時の接地位置は良好だが,右MSt~TStでは骨盤動揺,反張膝を認めた.
【介入と結果】
介入当初,軽度の体幹失調に対しCKCで体幹筋力増強を中心に行い,体幹の安定性向上が図れ,介入から3週間で,立位の体幹失調改善を認めたため,起立や歩行練習の比重を増加させた.体幹と股関節の協調性を促すために膝立ち位でステップ練習を行い,下肢の複合的な運動で筋力増強を図るために起立練習を行った.歩行練習では両下腿遠位に重錘を装着し感覚入力を行った後,重錘を外し内在的フィードバックを用いて下肢の振り出しや体幹の姿勢保持の運動学習を図った.
第74病日,SARAでは歩行4点,立位1点,座位0点,言語障害1点,指追い試験0点,鼻指試験1点,手回内外試験1点,踵脛試験2点の合計10点,FBS43点,FIM運動項目は83点に向上を認めた.体幹と股関節の協調性向上,下肢運動時の振戦と体幹失調改善を認めた.歩容は,左IC時の接地位置は良好となりLR~TStでの骨盤側方動揺・後方回旋の軽減,反張膝は消失し,歩行の安定性向上を認めた.病棟内移動は歩行器歩行自立となり,独歩は軽介助で可能となった.
【結論】
本症例は広範な小脳梗塞によって左優位の四肢運動失調,体幹にも失調症状を認め,立位以降で体幹・下肢の筋力低下により姿勢制御が困難であった.歩行周期における立脚期で下肢の筋収縮,筋出力の程度やタイミングが障害されることで歩行の安定性低下を認めたため,まず体幹に対するアプローチを中心に行い,四肢運動時の動揺の改善を図った.歩行練習では,重錘による負荷調整で下肢の筋収縮の再学習を図った.その結果,体幹と股関節の協調性向上,下肢の運動時振戦の改善を認め,歩行の安定性が向上し歩行器歩行自立,独歩の介助量軽減に至ったと考える.本症例を通して小脳性運動失調には,重錘負荷による筋紡錘への感覚入力や体幹の安定性向上を図ることが四肢随意運動時の協調性の再学習に対して有効であると考えられた.
【倫理的配慮、説明と同意】
本発表について,患者には説明のうえ同意を得た.
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