[P-11-04] 右失調性片麻痺により屋外歩行獲得が困難であった症例に対する考察と帰結
【症例紹介】
70代女性。左レンズ核線条体動脈のアテローム性脳梗塞により、右失調性片麻痺が出現。2病日に片麻痺が悪化。31病日に当院回復期リハビリテーション病棟に入院。Hopeは「歩いて外に出かけたい」であった。
【評価とリーズニング】
画像所見において放線冠レベルに梗塞巣を認め、皮質脊髄路(CST)、皮質-橋網様体路(CRT)、大脳小脳運動ループの損傷が疑われた。初期評価ではBrunnstrom recovery stage(BRS):Ⅱ-Ⅰ-Ⅳ、踵脛試験:陽性、Berg Balance Scale(BBS):32、Functional ambulation category(FAC):2、Functional Independence Measure(FIM):運動45、認知28であった。歩行観察では、麻痺側においてMstの荷重困難、骨盤外側動揺、Tstの短縮、sw時のクリアランス低下・足部内反が観察された。歩行動作に対してはCST、大脳-小脳運動ループの損傷に起因する麻痺側の運動麻痺、姿勢制御障害が主たる問題点と考えられた。
【介入と結果】
入院から1ヶ月では、麻痺側Mstの荷重困難・骨盤外側動揺に対して、荷重刺激や股関節中心の姿勢制御の改善を目的に膝立ち練習、長下肢装具を用いた立位・歩行練習を行った。起立/着座練習・姿勢制御課題では視覚・足底感覚など多感覚フィードバックを用いて抗重力下での協調的な関節制御の再学習を促した。2、3ヶ月では、短下肢装具(AFO)を用いた杖歩行が見守りで可能となったが、麻痺側swのクリアランス低下、足部内反は残存していた。そこで、病態を整理しプログラムの再構成を行なった。4ヶ月〜退院までは、非麻痺側を主体とする姿勢制御課題や麻痺側下肢の空間制御課題を中心に実施した。最終評価ではBRS:Ⅲ-Ⅲ-Ⅳ、踵脛試験:軽減、BBS:53点、Timed up and Go test:21秒、最大10m歩行:37.5m/min、3分間歩行距離:87m、FAC:4、FIM:運動82、認知35であった。なお、歩行能力はAFOを用いた杖歩行が屋内自立となったが、屋外歩行は見守りレベルのままであり、171病日に期限を迎えて自宅退院となった。屋外歩行を獲得できなかった要因は、麻痺側swのクリアランス低下、足部内反であった。これらは、CRTの損傷による非麻痺側への荷重移行の阻害と不安定性によるものと推察された。加えて、大脳小脳運動ループの損傷により麻痺側swの骨盤水平保持が困難となった結果、麻痺側前脛骨筋の過活動や機能的脚長差を生じさせたと考えた。
【結論】
介入初期より、運動麻痺および運動失調に対して運動療法を実施したが、非麻痺側下肢や麻痺側空間制御へのアプローチが不十分であった。また、大脳-小脳・基底核の認知・情動ループの損傷の可能性もあり、学習過程における認知・情動面の問題を考慮できなかった。本症例を通して、運動機能および動作能力の背景にある病態解釈の重要性を再認識することができた。
【倫理的配慮、説明と同意】
本症例に対しては、当発表の主旨及び目的を説明し同意を得た。
70代女性。左レンズ核線条体動脈のアテローム性脳梗塞により、右失調性片麻痺が出現。2病日に片麻痺が悪化。31病日に当院回復期リハビリテーション病棟に入院。Hopeは「歩いて外に出かけたい」であった。
【評価とリーズニング】
画像所見において放線冠レベルに梗塞巣を認め、皮質脊髄路(CST)、皮質-橋網様体路(CRT)、大脳小脳運動ループの損傷が疑われた。初期評価ではBrunnstrom recovery stage(BRS):Ⅱ-Ⅰ-Ⅳ、踵脛試験:陽性、Berg Balance Scale(BBS):32、Functional ambulation category(FAC):2、Functional Independence Measure(FIM):運動45、認知28であった。歩行観察では、麻痺側においてMstの荷重困難、骨盤外側動揺、Tstの短縮、sw時のクリアランス低下・足部内反が観察された。歩行動作に対してはCST、大脳-小脳運動ループの損傷に起因する麻痺側の運動麻痺、姿勢制御障害が主たる問題点と考えられた。
【介入と結果】
入院から1ヶ月では、麻痺側Mstの荷重困難・骨盤外側動揺に対して、荷重刺激や股関節中心の姿勢制御の改善を目的に膝立ち練習、長下肢装具を用いた立位・歩行練習を行った。起立/着座練習・姿勢制御課題では視覚・足底感覚など多感覚フィードバックを用いて抗重力下での協調的な関節制御の再学習を促した。2、3ヶ月では、短下肢装具(AFO)を用いた杖歩行が見守りで可能となったが、麻痺側swのクリアランス低下、足部内反は残存していた。そこで、病態を整理しプログラムの再構成を行なった。4ヶ月〜退院までは、非麻痺側を主体とする姿勢制御課題や麻痺側下肢の空間制御課題を中心に実施した。最終評価ではBRS:Ⅲ-Ⅲ-Ⅳ、踵脛試験:軽減、BBS:53点、Timed up and Go test:21秒、最大10m歩行:37.5m/min、3分間歩行距離:87m、FAC:4、FIM:運動82、認知35であった。なお、歩行能力はAFOを用いた杖歩行が屋内自立となったが、屋外歩行は見守りレベルのままであり、171病日に期限を迎えて自宅退院となった。屋外歩行を獲得できなかった要因は、麻痺側swのクリアランス低下、足部内反であった。これらは、CRTの損傷による非麻痺側への荷重移行の阻害と不安定性によるものと推察された。加えて、大脳小脳運動ループの損傷により麻痺側swの骨盤水平保持が困難となった結果、麻痺側前脛骨筋の過活動や機能的脚長差を生じさせたと考えた。
【結論】
介入初期より、運動麻痺および運動失調に対して運動療法を実施したが、非麻痺側下肢や麻痺側空間制御へのアプローチが不十分であった。また、大脳-小脳・基底核の認知・情動ループの損傷の可能性もあり、学習過程における認知・情動面の問題を考慮できなかった。本症例を通して、運動機能および動作能力の背景にある病態解釈の重要性を再認識することができた。
【倫理的配慮、説明と同意】
本症例に対しては、当発表の主旨及び目的を説明し同意を得た。
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