第34回大阪府理学療法学術大会

講演情報

口述 一般演題

事前公開

[O-12] 一般演題(脳卒中④)

2022年7月3日(日) 15:15 〜 16:00 会場3 (10階 1008会議室)

座長:鎌田 将星(国立循環器病研究センター)

15:15 〜 15:25

[O-12-1] 機能的電気刺激サイクリングを併用した練習により歩行機能の改善を得た前大脳動脈領域梗塞の一症例

濱中 駿, 松本 拓也 (JCHO星ヶ丘医療センターリハビリテーション部)

キーワード:前大脳動脈領域梗塞、機能的電気刺激サイクリング

【症例紹介】
右前大脳動脈領域梗塞を認めた80歳代女性であり,中等度麻痺による歩行障害に加えて前頭葉関連症状を呈していた。病前の日常生活動作は自立されており,発症20病日で回復期病棟に入棟した。歩行は屋内外ともに歩行補助具を使用して見守りになると予測した。本人の希望は屋内外を歩けるようになる事であり,患者希望と予後予測を踏まえた上で短期目標は歩行補助具を使用しトイレ歩行見守りとし,受け入れの良い理学療法を模索して実施した。
【評価とリーズニング】
発症32病日時の初期評価はStroke Impairment Assessment Set-Motor(SIAS-m)は3,Berg Balance Scale(BBS)は10/56点,Hand-held Dynamometer (HHD)で測定した膝伸展筋力は右0.78Nm/kg,左0.36Nm/kg,快適歩行速度は0.25m/s,6分間歩行は85m,Functional Ambulation Categories(FAC)は1,Functional Independence Measure(FIM)は運動29/91点であった。自発性低下や意欲低下といった前頭葉関連症状を認め,歩行練習や立位練習を積極的に実施できなかった。そのため,受け入れの良い理学療法を模索したところ,機能的電気刺激(FES)およびサイクリングに対しては受け入れが良く前向きな発言も見られた。FESサイクリングは歩行自立度を改善するとの報告(Bauer,2015)があり,本人の病状や好みを考慮した中でFESやリカンベントエルゴメーターの機器が当院にあること,機器の使用経験があることも踏まえてFESサイクリングを選択した。
【介入と結果】
1日の理学療法時間は3~4単位で,1セッションあたり20分のFESサイクリングを4週間実施した。電気刺激は大腿直筋と内側広筋及び半腱様筋と大腿二頭筋に耐え得る最大強度で動作時に手動で刺激を加えた。残りの時間を短下肢装具と4点杖を使用した歩行練習に充てた。FESサイクリングを始めてからはリハビリに対する意欲も出てきたため,歩行練習にも時間を費やせるようになり,歩行時間は各週平均10~20分,歩数は520歩~1230歩と促すことができた。発症60病日時の最終評価は運動麻痺は著変なし,BBSは30/56点,HHDで測定した膝伸展筋力は右1.19Nm/kg,左0.58Nm/kg,快適歩行速度は0.43m/s,6分間歩行は170m,FACは3,FIMは運動55/91点となった。歩行は装具および杖なしで見守りとなり,介入終了から15日後に短期目標であったトイレへの見守り歩行が開始となった。
【結論】
本症例は前頭葉関連症状を認めたため、受け入れが良く意欲的に取り組める理学療法を模索した。エビデンスに加えて症例の病状や環境,価値観を踏まえた上でFESサイクリングを実施した結果,FACや歩行速度の改善を得ることができた。