[P-120-C] 直接経口Xa阻害薬服用患者の推算糸球体濾過値と出血リスクの関連性
【目的】当局では2020年より、推算糸球体濾過値(eGFR)が腎臓専門医への紹介基準となる中等度以上腎機能低下(45mL/min/1.73m2未満)の患者に対し、慢性腎臓病シールを貼付しフォローを行ってきた。しかし、eGFR推移に応じた直接経口Xa阻害薬の投与量を確認していたにも関わらず、治療を中断せざるを得ない出血イベントが生じる例を認めた。本研究では現行の減量基準に該当しない患者を対象に出血イベントを調査し、処方監査と服薬指導時の留意点を明らかにする。
【方法】2022年1月~2022年3月に来局した患者のうち過去2年間の薬剤服用歴管理記録から当局で頻用されているアピキサバン、エドキサバンの服薬患者を抽出し、「eGFRを考慮すると減量基準付近(減量基準には該当しない)患者」と「eGFRが70mL/min/1.73m2以上の患者」に分類した。次に対象となった患者の出血イベントを調査し、「出血あり」と「出血なし」の群に分け、カイ2乗検定と残差分析により統計解析した。統計解析ソフトは、IBM SPSS Statistics 28(日本IBM(株)東京)を用い、それぞれの検定において有意水準は5 %未満とした。本研究は茨城県薬剤師会倫理審査委員会の承認を得て実施した(承認番号:202103 )。
【結果】検定と分析を行った結果、有意な差が得られた(χ2(1)=5.903 ,p<.015 )。「eGFRを考慮すると減量基準付近の患者」(n=12 )では「出血あり」(n=5 )に有意に関係することが、また「eGFRが70 mL/min/1.73 m2以上の患者」(n=44 )では、「出血なし」(n=39 )に有意に関係することが示された。「出血あり」全10 件のうち治療中断が必要となった例は3 件であった。
【考察】本調査により、直接経口Xa阻害薬のeGFRによる減量基準付近の患者では、出血リスクが上昇している可能性を考慮した処方監査と服薬指導の重要性が示された。投与量の指標となる腎機能検査値や体格などを継続的に確認していく必要がある。