第17回日本薬局学会学術総会

講演情報

一般演題(ポスター)

一般演題(ポスター)Cグループ

2023年10月9日(月) 14:50 〜 15:30 ポスター会場 (2号館3階 会議室231/会議室232+233/会議室234)

[P-021-C] 終末期の嚥下機能低下患者に対する薬剤師の在り方とは

長谷川 凌平1, 矢吹 洸二2, 庄村 元希3 (1.なの花薬局 おかわち店, 2.(株)永冨調剤薬局 敷戸団地店, 3.(株)なの花中部 事業部 教育セクション)

【背景】
高齢者において、経口摂取するということは解剖生理的な機能だけでなく、幼少期からの好きなものを食べて懐かしみ心地よい気持ちに浸り、食べることで生きている自分を支えるなど、心理的な効果も期待できる。食べることは、生きることと直結すると考えられる。今回、治療により回復の望めない終末期患者の在宅にて、徐々に経口摂取が衰えていくケースを経験した。薬剤師としての在り方について、本症例報告を参考に議論が進むことを期待する。
【症例】
80代男性。要介護4。X-14年間質性肺炎の診断あり。X-3年度重なる転倒などで入退院を繰り返し、X年9月に意識レベルの低下と発熱で救急搬送、その後終末期対応として薬剤師の居宅介入を開始。身長・体重は不明、食事・服薬ともに経口摂取していたが、嚥下機能の低下と共に液体はとろみ付き・食事はペースト状となっていった。摂取カロリーは400~500kcal/日、水分量は500ml/日程度、タンパク質量15g/日程度。患者は「最後に好きなものを食べたい」という願いがあり、医師、訪問看護師と患者や家族の願いを叶えつつ、褥瘡予防にも努めることを共通認識とした。1週間ごとの訪問にて物性調整食品各種 を用い、食の幅を広げつつ摂取カロリーを500~600kcal/日まで増やす事ができた。患者の好物である「ビール」については炭酸を保持したままとろみを付け「最後に好きなもの」を口にする希望を叶えることができた。居宅介入2か月後に患者死亡。
【考察】
終末期における薬剤師の在り方を考えさせられた症例であった。もっとも重要なことは、人生の最期を迎えるその時には通り一辺倒の支援以外の特別な寄り添いである。そのためには患者及び家族が置かれている状況とその背景を把握するとともに、医療者、患者、家族との十分なコミュニケーションが不可欠である。