[3P-23] Molecular mechanism of early process of amyloid β aggregate formation
生体内におけるアミロイド繊維などの蛋白質・ペプチド凝集体の形成は、様々な神経変性疾患を含む多くの疾病の発症と深くかかわっていることが知られている。一方、これらの凝集体形成の分子レベルでの機構に関する物理化学的な理解は充分ではない。特に、in vivoにおける凝集体の形成や蓄積は往々にして数年から数十年という時間スケールで進行するが、in vitroでの研究では数時間程度の時間内に生ずる凝集体の形成過程を標的としたものであることが多く、この反応速度に関する時間スケールの大きな違いをどのように扱うべきであるかということを判断するための基礎的な分子機構の解明は重要である。本研究では、アルツハイマー病の病理との関係で重要と考えられているアミロイドβ42ペプチドの凝集初期の核形成の段階の分子機構に関する分子構造と物理化学的要件に関して詳細に検討することを目的として実験を行った。まず安定同位体標識体を組み換えタンパク質として発現・精製し、HFIP処理により凝集核のない試料を調製する方法の条件検討を行った。次に、この初期状態を揃えた試料を用いて、核磁気共鳴(NMR)分光法、ならびにチオフラビンアッセイによって試料の時間変化を定量的に追跡し、凝集過程の速度について精密に調べた。本発表では、それらの結果から、アミロイドβ42ペプチドの凝集体形成に関して、初期の凝集核形成段階の速度に影響を与える分子構造に関する特殊な要因について検討した結果を報告する。