第21回日本蛋白質科学会年会

講演情報

ワークショップ

[WS11] 生体分子の人工設計で切り開く生命科学研究

2021年6月18日(金) 17:30 〜 20:00 チャンネル1

オーガナイザー:真壁 幸樹(山形大学)、田中 俊一(京都府立大学)

19:00 〜 19:20

[WS11-06] エピトランスクリプトームを制御する人工タンパク質の創製

今西 未来 (京大・化研)

エピトランスクリプトームと呼ばれる転写後修飾はRNA代謝に重要な役割を果たし、中でも、高頻度で転写産物に存在するN6-メチルアデノシン(m6A)はmRNAの安定性や局在、翻訳などを制御し、発生や分化、ガン化、体内時計などにも関わる。アデノシンのメチル化レベルはメチル化酵素METTL3/14および脱メチル化酵素FTO、ALKBH5によって調節されている。これまでに、m6Aのシークエンス解析や、酵素ノックダウン実験などから、様々な生命現象におけるRNAメチル化の重要性が示唆されてきた。しかし、個々のトランスクリプトにおける領域特異的なm6Aの役割を明らかにするためには、配列選択的にRNAのメチル化状態を操作できる分子ツールが必要となる。そこで、塩基認識に関わるアミノ酸の単純な改変によって、結合するRNAの配列を自在に変えることができるRNA結合タンパク質PUFを用い、メチル化酵素METTL14、もしくは脱メチル化酵素FTOとの融合タンパク質を作製した。in vitroでの検討の結果、これらの人工タンパク質は、PUFの結合配列近傍のアデノシンのメチル化やm6Aの脱メチル化を選択的に制御することが示唆された。PUFは様々なRNA配列に対してデザインすることができるため、PUFを用いたRNA配列選択的エピトランスクリプトーム制御は、個々のRNAメチル化の機能を明らかにするための新しい方法として期待される。