第21回日本蛋白質科学会年会

講演情報

ワークショップ

[WS12] 画像処理を工夫してクライオ電顕で構造決定が難しいタンパク質に取り組む!

2021年6月18日(金) 17:30 〜 20:00 チャンネル2

オーガナイザー:守屋 俊夫(高エネルギー加速器研究機構)、横山 武司(東北大学)

17:55 〜 18:20

[WS12-02] 高分解能クライオ電顕マップを用いた補因子の同定

加藤 公児1, 長尾 遼1, 沈 建仁1, 秋田 総理1, 宮崎 直幸2 (1.岡大・異分野基礎研, 2.筑波大・TARA)

クライオ電子顕微鏡(電顕)単粒子解析法は近年急速に発展しており、比較的容易にタンパク質や核酸の分子構造を決定できるようになった。しかしながら、構造が類似している補因子を区別できる精度の分解能の構造解析例は少ない。我々のグループが対象としている光合成関連タンパク質は、置換基の異なる複数種の光合成色素クロロフィル(Chl)を補因子として持つ。これらの Chl は構造が類似しているにもかかわらず、吸収できる光の波長が異なるため、そのタンパク質複合体としての機能は光合成生物にとって重要である。本研究ではクライオ電顕単粒子解析により、光合成反応の中心を担う光化学系I(PSI)に結合する Chl a と Chl f (クロリン環C2位の置換基がメチル基とホルミル基)の同定を試みた。シアノバクテリアの1種である Halomicronema hongdechloris は、白色光の環境下で培養したときは PSI に Chl a のみを結合しており、その光を遠赤色光に変えると、細胞内部の Chl f が増加し、PSI に複数個の Chl f が結合するという特徴を持っている。この H. hongdechloris を白色光と遠赤色光の2つの環境下で培養し、それぞれについて PSI を精製し、クライオ電顕単粒子解析により、2.35 Å、2.41 Åの分解能で構造を決定した。得られた高分解能のクライオ電顕マップを詳細に解析することにより、遠赤色光下で得られた PSI に、単量体あたり83個の Chl a と7個の Chl f を同定した。本発表ではその解析法の詳細を紹介する。