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[S03P-03] 関東地方におけるスロースリップイベントの系統的検出の試み
関東地方に沈み込むフィリピン海プレート上部境界では、房総半島沖において数年おきにスロースリップイベント(SSE)が発生していることが知られている。本研究では、より小さなイベントまで含めたSSE活動様式を理解するため、GNSSデータに基づくSSEの系統的な検出を試みた。使用したデータは国土地理院GEONETの188観測点における1998年から2018年までの日座標値である。SSEの検出には、一枚矩形断層によるモデル時系列と観測時系列の差を最小にするように断層位置をグリッドサーチする手法(Takagi et al., 2019)を用いた。その結果、これまでにもよく知られている2002年・2007年・2011年・2013年・2018年の房総半島沖のSSEに加えて、2009年末にも同様の領域において小規模なSSEが発生していた可能性が見出された。2009年12月には小繰り返し地震を含むプレート境界付近の地震活動が若干増加し、ごく小規模のSSEがHi-net傾斜計の一観測点で検出されている(防災科学技術研究所, 2010)。本研究により複数のGNSS観測点においても非定常変動を検出したこと、および、小繰り返し地震から見積もったすべりレートがやや増加していることから、2009年末の小規模SSEの発生とそれに伴うプレート境界地震の活動増加がより確からしいことが示された。また、2008年末にはより内陸側の房総半島下においてSSEが発生していた可能性も検出され、関東地方のフィリピン海プレート上で発生するSSEは、これまで考えられて以上に複雑な発生様式を持つ可能性がある。