17:00 〜 18:30
[S06P-04] 昭和新山地下構造推定のための稠密地震観測と初期解析結果
火山噴火時の溶岩ドーム形成は珪長質マグマの噴出における重要な過程の一つである。有珠火山の東に位置する昭和新山は1943年から1945年にかける噴火及び隆起において形成された標高398mの火山で、成長にともなう地形変化は三松ダイアグラムとして知られている。最上部にはマグマが露出した溶岩ドームが存在し、標高約200mで比較的平らな屋根山と呼ばれる部分は植生が回復した潜在溶岩ドームとなっており。屋根山の部分は隆起しているが、その下にマグマが入っているかどうかは分かっていない。
昭和新山においては、2次元P波速度構造(根本他 1957)や2次元比抵抗構造(Goto and Johmori 2014)などいくつかの構造推定が行われている。中でもNishiyama et al. (2014, 2017)は宇宙線ミューオン記録による斜め方向の密度構造推定(Tanaka et al. 2007)と鉛直方向の密度を反映する重力測定結果とを組み合わせることで3次元密度構造を推定した。本研究では、3次元S波速度構造を得て溶岩ドームの形成過程を明らかにするために地震観測と初期解析を行った。
観測には東京大学地震研究所共同利用機材である1Hz地震計LE-3Dlite MkIIIとロガーLS-8800を使用し100spsで記録した。まず、東京大学地震研究所においてテスト観測を行った。観測時期である5月に相当する気温での電池の持続時間を検証するため、東京で気温が同等となる2月に屋外に機材を設置し、単1電池8本で約1ヶ月の観測が可能なことを明らかにした。さらには22台の地震計の屋内並行観測を実施し、1Hz地震計の機器位相応答が0.2Hz以上で5度以内かつ補正可能であることを確認した。
本観測の観測点は昭和新山上の山頂付近に2点、山頂周辺に5点、東の屋根山に10点、麓に5点の合計22点である。観測点間隔は約200mである。2018年5月9日から10日にかけて地震計とロガーを設置し、2018年6月6日から8日にかけて回収した。尚、山の上に車は入れないため、徒歩で設置・回収を行っている。この記録と気象庁及び防災科学技術研究所の定常観測点記録を用いて解析を行った。
地震波干渉法解析にはTakeo et al. (2013)の手法を用いた。まず、全ての記録を20spsにリサンプルし、約102秒の半分ずつ重なる時間窓に区切った。前またはその前の時間窓より10倍以上振幅が大きくなる時間窓をイベントの記録されている時間窓と定義した。イベントの記録されていない雑微動の時間窓のみを用いて観測点間のクロススペクトルを計算し、振幅を1に規格化してから全期間を足し合わせた。その逆フーリエ変換を相互相関関数とし、主に観測点間を伝わる表面波を抽出したと仮定して解析を進めた。
地形によって観測点を山頂付近・周辺、屋根山、麓の3地域に分類し、それぞれ1次元構造の推定を試みた。通常のSPAC法(Aki 1957)による解析は構造不均質の影響で周波数帯が2—3Hzに限られた。屋根山と麓の位相速度は大きく異ならない一方、山頂周辺では屋根山や麓に比べて位相速度が早く、深さ数百mまでのS波速度が速いことに対応することがわかった。
そのほか、3次元構造に向けて各観測点間の位相速度を測定した。ここでは、不均質の影響や2π不確定性の影響で自動化が非常に困難であったため、pythonによるGUIツールを作成し手動で測定した。将来的には測定精度を向上し、3次元トモグラフィーを行い、3次元密度構造などとの比較を行い、溶岩ドームの形成過程を明らかにする予定である。
図:観測点配置図。赤は山頂付近及び山頂周辺の観測点。黄緑は屋根山の観測点、青は麓の観測点を表す。
昭和新山においては、2次元P波速度構造(根本他 1957)や2次元比抵抗構造(Goto and Johmori 2014)などいくつかの構造推定が行われている。中でもNishiyama et al. (2014, 2017)は宇宙線ミューオン記録による斜め方向の密度構造推定(Tanaka et al. 2007)と鉛直方向の密度を反映する重力測定結果とを組み合わせることで3次元密度構造を推定した。本研究では、3次元S波速度構造を得て溶岩ドームの形成過程を明らかにするために地震観測と初期解析を行った。
観測には東京大学地震研究所共同利用機材である1Hz地震計LE-3Dlite MkIIIとロガーLS-8800を使用し100spsで記録した。まず、東京大学地震研究所においてテスト観測を行った。観測時期である5月に相当する気温での電池の持続時間を検証するため、東京で気温が同等となる2月に屋外に機材を設置し、単1電池8本で約1ヶ月の観測が可能なことを明らかにした。さらには22台の地震計の屋内並行観測を実施し、1Hz地震計の機器位相応答が0.2Hz以上で5度以内かつ補正可能であることを確認した。
本観測の観測点は昭和新山上の山頂付近に2点、山頂周辺に5点、東の屋根山に10点、麓に5点の合計22点である。観測点間隔は約200mである。2018年5月9日から10日にかけて地震計とロガーを設置し、2018年6月6日から8日にかけて回収した。尚、山の上に車は入れないため、徒歩で設置・回収を行っている。この記録と気象庁及び防災科学技術研究所の定常観測点記録を用いて解析を行った。
地震波干渉法解析にはTakeo et al. (2013)の手法を用いた。まず、全ての記録を20spsにリサンプルし、約102秒の半分ずつ重なる時間窓に区切った。前またはその前の時間窓より10倍以上振幅が大きくなる時間窓をイベントの記録されている時間窓と定義した。イベントの記録されていない雑微動の時間窓のみを用いて観測点間のクロススペクトルを計算し、振幅を1に規格化してから全期間を足し合わせた。その逆フーリエ変換を相互相関関数とし、主に観測点間を伝わる表面波を抽出したと仮定して解析を進めた。
地形によって観測点を山頂付近・周辺、屋根山、麓の3地域に分類し、それぞれ1次元構造の推定を試みた。通常のSPAC法(Aki 1957)による解析は構造不均質の影響で周波数帯が2—3Hzに限られた。屋根山と麓の位相速度は大きく異ならない一方、山頂周辺では屋根山や麓に比べて位相速度が早く、深さ数百mまでのS波速度が速いことに対応することがわかった。
そのほか、3次元構造に向けて各観測点間の位相速度を測定した。ここでは、不均質の影響や2π不確定性の影響で自動化が非常に困難であったため、pythonによるGUIツールを作成し手動で測定した。将来的には測定精度を向上し、3次元トモグラフィーを行い、3次元密度構造などとの比較を行い、溶岩ドームの形成過程を明らかにする予定である。
図:観測点配置図。赤は山頂付近及び山頂周辺の観測点。黄緑は屋根山の観測点、青は麓の観測点を表す。