11:00 〜 11:15
[S22-06] ランニングスペクトル画像認識による地震・低周波微動シグナルの識別
近年の地震・地殻変動観測網と観測データ解析技術の発達により、プレート境界地震の震源域周辺において、低周波微動、超低周波地震、スロースリップ等のスロー地震が発生していることが明らかになっている。スロー地震の発生メカニズムを解明し、発生状況をモニタすることで、巨大地震の発生メカニズムと準備過程について理解が深まると期待されている。その中でも低周波微動は、低周波成分が卓越し、数十秒以上継続するシグナルとして観測される。低周波微動の検知には主にエンベロープ相関法が用いられるが、この手法では通常の地震動も同時に検出してしまうため、地震カタログを用いたり、目視によるチェックによって、低周波微動のイベントだけを抽出する必要がある。
一方で、低周波微動と通常の地震動のシグナルは卓越する周波数成分と継続時間が異なり、これらの情報からシグナルを判別できると考えられる。すなわち、低周波微動は通常の地震動と比べて10Hz程度以下の低周波成分が卓越し、またシグナルの継続時間は数十秒以上と、ローカルな地震と比べて長時間シグナルが継続する。シグナルに含まれる周波数成分と継続時間を同時に表現する手法として、ランニングスペクトルがある。そこで本研究では、ランニングスペクトルの画像認識によって低周波微動および通常の地震動を判別する手法を開発した。
画像に含まれる共通した特徴を自動で学習、認識し、判別する技術として、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)が主に用いられる。通常のCNNによる画像認識では、シグナルの特徴が画像のどこに現れても認識できるように設計する。一方地震動の場合、シグナルの現れる時刻、すなわちランニングスペクトル画像の横方向の位置はどこでも構わないが、周波数成分については震源の物理プロセスを反映しているため、周波数の絶対値(画像の縦方向の位置)はシグナルの判別に重要な情報となる。従って、本研究では画像の縦方向(=周波数)には位置感度を持たせつつ、横方向(=時刻)の位置には影響を受けない、非対称な画像認識手法を新たに考案し、低周波微動と通常の地震を判別する手法を開発した(SRSpec-CNN; Nakano et al., 2019 SRL)。
CNNによる画像認識では通常、画像に含まれるシグナルの特徴を抽出する畳み込み層と、シグナルの位置感度を軽減するためのプーリング層、これらの層の出力とシグナルの関連付けを行う全結合層から構成される。通常のプーリング層は、画像の縦横の両方向に適用し、シグナルの特徴が画像のどこに現れても適切に認識できるように構成する。しかし今回開発したSRSpec-CNNでは、プーリング層を画像の横(時間)方向のみに適用することで、縦方向(周波数)には位置感度を持つよう構成した。この点が通常のCNNとは異なる。
今回開発したSRSpec-CNNをDONETで観測された低周波微動と通常の地震動、ノイズの記録から作成したランニングスペクトル画像を用いて学習させ、シグナルの判別精度評価を行った。画像は64×64ピクセルとし、横方向は時間(225秒)、縦方向は周波数(2-10 Hz)に対応する。この時、二つの観測点(KMB06とKMD13)のデータは学習に用いず、新しく観測点が追加された場合を想定した性能評価試験に用いた。また、比較のためにプーリング層を通常のCNNと同じ構成とした場合のシグナル判別も行った。
その結果、通常のCNNの場合は正解率(予測結果全体の中で、答えが正解と一致している割合)が95.9%だったのに対し、今回開発したSRSpec-CNNでは97.4%に向上した。さらに学習パラメータを最適化することで、最終的に99.5%の正解率を達成した。また、除外した二つの観測点のデータに対し、学習済みのネットワークを用いてシグナル判別を行ったところ、正解率は99.2%と、やはり高い判別性能を示した。つまり、既に観測網を展開している領域でのシグナルの一般的な特徴を学習しているため、観測網に新しい観測点を追加しても改めて学習をやり直す必要はない。
本研究ではシグナルの学習と判別において、シグナルが明瞭でないものや一つの画像に複数イベントが含まれているような、ノイジーなデータは除去した。今後はノイジーなデータにおける判別率の向上についても検討していく必要がある。
一方で、低周波微動と通常の地震動のシグナルは卓越する周波数成分と継続時間が異なり、これらの情報からシグナルを判別できると考えられる。すなわち、低周波微動は通常の地震動と比べて10Hz程度以下の低周波成分が卓越し、またシグナルの継続時間は数十秒以上と、ローカルな地震と比べて長時間シグナルが継続する。シグナルに含まれる周波数成分と継続時間を同時に表現する手法として、ランニングスペクトルがある。そこで本研究では、ランニングスペクトルの画像認識によって低周波微動および通常の地震動を判別する手法を開発した。
画像に含まれる共通した特徴を自動で学習、認識し、判別する技術として、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)が主に用いられる。通常のCNNによる画像認識では、シグナルの特徴が画像のどこに現れても認識できるように設計する。一方地震動の場合、シグナルの現れる時刻、すなわちランニングスペクトル画像の横方向の位置はどこでも構わないが、周波数成分については震源の物理プロセスを反映しているため、周波数の絶対値(画像の縦方向の位置)はシグナルの判別に重要な情報となる。従って、本研究では画像の縦方向(=周波数)には位置感度を持たせつつ、横方向(=時刻)の位置には影響を受けない、非対称な画像認識手法を新たに考案し、低周波微動と通常の地震を判別する手法を開発した(SRSpec-CNN; Nakano et al., 2019 SRL)。
CNNによる画像認識では通常、画像に含まれるシグナルの特徴を抽出する畳み込み層と、シグナルの位置感度を軽減するためのプーリング層、これらの層の出力とシグナルの関連付けを行う全結合層から構成される。通常のプーリング層は、画像の縦横の両方向に適用し、シグナルの特徴が画像のどこに現れても適切に認識できるように構成する。しかし今回開発したSRSpec-CNNでは、プーリング層を画像の横(時間)方向のみに適用することで、縦方向(周波数)には位置感度を持つよう構成した。この点が通常のCNNとは異なる。
今回開発したSRSpec-CNNをDONETで観測された低周波微動と通常の地震動、ノイズの記録から作成したランニングスペクトル画像を用いて学習させ、シグナルの判別精度評価を行った。画像は64×64ピクセルとし、横方向は時間(225秒)、縦方向は周波数(2-10 Hz)に対応する。この時、二つの観測点(KMB06とKMD13)のデータは学習に用いず、新しく観測点が追加された場合を想定した性能評価試験に用いた。また、比較のためにプーリング層を通常のCNNと同じ構成とした場合のシグナル判別も行った。
その結果、通常のCNNの場合は正解率(予測結果全体の中で、答えが正解と一致している割合)が95.9%だったのに対し、今回開発したSRSpec-CNNでは97.4%に向上した。さらに学習パラメータを最適化することで、最終的に99.5%の正解率を達成した。また、除外した二つの観測点のデータに対し、学習済みのネットワークを用いてシグナル判別を行ったところ、正解率は99.2%と、やはり高い判別性能を示した。つまり、既に観測網を展開している領域でのシグナルの一般的な特徴を学習しているため、観測網に新しい観測点を追加しても改めて学習をやり直す必要はない。
本研究ではシグナルの学習と判別において、シグナルが明瞭でないものや一つの画像に複数イベントが含まれているような、ノイジーなデータは除去した。今後はノイジーなデータにおける判別率の向上についても検討していく必要がある。