5:00 PM - 6:30 PM
[S24P-07] Source Process of the Off Yamagata Earthquake of June 18, 2019
【はじめに】
2019年6月18日22:22に新潟-山形県境沖でM 6.7の地震が発生した.震央は海域であったが,震源近傍の新潟県村上市では震度6強,山形県鶴岡市では震度6弱となるなど強い揺れが観測された.さらに,弱いながらも津波が観測されており,これらの要因を考える上で詳細な震源過程を知ることが必要である.また,日本海東縁部ではこれまでも大地震が多く発生しており,近年も2004年新潟県中越地震や2007年新潟県中越沖地震など,今回の地震と同規模の地震が発生している.今回の地震の震源過程とこれらの地震との相違について検討することは,この地域の地震テクトニクスを考える上で重要である.そこで,本検討では震源近傍で観測された強震記録を用いて震源過程解析を行った.
【解析手順・条件】
震源インバージョン解析に先立ち,本震を含めて一連の地震の震源再決定を行った.地震発生後2週間以内に発生した地震について,防災科研のWebサイトで公開されている気象庁一元化処理による検測値を用いて,DD法(Waldhauser and Ellsworth, 2000)により震源決定を行った.以下の解析に用いた本震の震源位置は(38.6147°N, 139.4758°E, 13.97km)である.
震源解析には,震源から60 km程度以内に位置するK-NETおよびKiK-netの波形記録を使用した.さらに,気象庁の粟島観測点の震度計波形についても,海域の観測点として解析に加えた.なお,KiK-net観測点では,浅部地盤による影響を軽減するために地中記録を使用した.
グリーン関数の計算はKohketsu (1985)により行った.計算に用いる1元水平成層構造は,全国1次地下構造モデル(暫定版)の各観測点直下の速度構造を抜き出したものを初期値とし,震源付近で発生した小地震(2019年6月21日5:33, Mw3.8)の観測波形でチューニングを行ったモデルを使用した.予稿で示す暫定解は粟島観測点を除いて,速度構造のチューニングを実施できた観測点を用いており,合計14観測点を使用したものである.
本震の震源解析では,加速度波形に0.03~1.0 Hz をフラットレベルとするバンドパスフィルタをかけて積分した速度波形を用い,インバージョンはマルチタイムウィンドウ法(Yoshida et al., 1996; 引間, 2012)により行った.解析の際の断層面は,F-netによるメカニズム解(23°, 36°, 86°)をもとに,余震分布を参考に東傾斜の断層面を設定した上で,波形の一致度などを参考に修正を行った.小断層サイズは2 km ×2 km とした.
【解析結果(暫定)】
暫定的な結果では,断層面は走向:32°,傾斜:30°長さ22 km ×幅16 km 程度となった.求まった地震規模はMw6.36程度,最大すべり量は約1.5 m のほぼ純粋な逆断層型の結果が得られた.最大すべりの位置は破壊開始点の北側に位置しているが,そこを含めて,やや大きなすべりが求まった領域の付近で多くの余震が発生している.
【考察・まとめ】
この地震では建物被害が比較的小さかったが,その要因として観測された地震動は短周期成分に富み,周期1~2秒程度の成分が少なかったことが指摘されている.破壊開始点と主要なすべり域との位置関係からは,破壊は主に沖合に進展したと推定され,陸域に対してはディレクティビティ効果が現れにくくかったものと考えられる.過去の地殻内地震ではディレクティビティ効果よるパルス的な波と建物被害との関係が注目されてきたが,今回の地震では陸域に対してはそのような波が生じにくかった可能性がある.
また,地震規模と断層サイズの関係は,過去に日本海東縁部で発生した地震によるものと概ね対応している.
<謝辞:解析には,防災科学技術研究所K-NET, KiK-netの観測記録,F-netメカニズム解,気象庁一元化震源,震度計データ等を使用させて頂きました.記して感謝致します.>
2019年6月18日22:22に新潟-山形県境沖でM 6.7の地震が発生した.震央は海域であったが,震源近傍の新潟県村上市では震度6強,山形県鶴岡市では震度6弱となるなど強い揺れが観測された.さらに,弱いながらも津波が観測されており,これらの要因を考える上で詳細な震源過程を知ることが必要である.また,日本海東縁部ではこれまでも大地震が多く発生しており,近年も2004年新潟県中越地震や2007年新潟県中越沖地震など,今回の地震と同規模の地震が発生している.今回の地震の震源過程とこれらの地震との相違について検討することは,この地域の地震テクトニクスを考える上で重要である.そこで,本検討では震源近傍で観測された強震記録を用いて震源過程解析を行った.
【解析手順・条件】
震源インバージョン解析に先立ち,本震を含めて一連の地震の震源再決定を行った.地震発生後2週間以内に発生した地震について,防災科研のWebサイトで公開されている気象庁一元化処理による検測値を用いて,DD法(Waldhauser and Ellsworth, 2000)により震源決定を行った.以下の解析に用いた本震の震源位置は(38.6147°N, 139.4758°E, 13.97km)である.
震源解析には,震源から60 km程度以内に位置するK-NETおよびKiK-netの波形記録を使用した.さらに,気象庁の粟島観測点の震度計波形についても,海域の観測点として解析に加えた.なお,KiK-net観測点では,浅部地盤による影響を軽減するために地中記録を使用した.
グリーン関数の計算はKohketsu (1985)により行った.計算に用いる1元水平成層構造は,全国1次地下構造モデル(暫定版)の各観測点直下の速度構造を抜き出したものを初期値とし,震源付近で発生した小地震(2019年6月21日5:33, Mw3.8)の観測波形でチューニングを行ったモデルを使用した.予稿で示す暫定解は粟島観測点を除いて,速度構造のチューニングを実施できた観測点を用いており,合計14観測点を使用したものである.
本震の震源解析では,加速度波形に0.03~1.0 Hz をフラットレベルとするバンドパスフィルタをかけて積分した速度波形を用い,インバージョンはマルチタイムウィンドウ法(Yoshida et al., 1996; 引間, 2012)により行った.解析の際の断層面は,F-netによるメカニズム解(23°, 36°, 86°)をもとに,余震分布を参考に東傾斜の断層面を設定した上で,波形の一致度などを参考に修正を行った.小断層サイズは2 km ×2 km とした.
【解析結果(暫定)】
暫定的な結果では,断層面は走向:32°,傾斜:30°長さ22 km ×幅16 km 程度となった.求まった地震規模はMw6.36程度,最大すべり量は約1.5 m のほぼ純粋な逆断層型の結果が得られた.最大すべりの位置は破壊開始点の北側に位置しているが,そこを含めて,やや大きなすべりが求まった領域の付近で多くの余震が発生している.
【考察・まとめ】
この地震では建物被害が比較的小さかったが,その要因として観測された地震動は短周期成分に富み,周期1~2秒程度の成分が少なかったことが指摘されている.破壊開始点と主要なすべり域との位置関係からは,破壊は主に沖合に進展したと推定され,陸域に対してはディレクティビティ効果が現れにくくかったものと考えられる.過去の地殻内地震ではディレクティビティ効果よるパルス的な波と建物被害との関係が注目されてきたが,今回の地震では陸域に対してはそのような波が生じにくかった可能性がある.
また,地震規模と断層サイズの関係は,過去に日本海東縁部で発生した地震によるものと概ね対応している.
<謝辞:解析には,防災科学技術研究所K-NET, KiK-netの観測記録,F-netメカニズム解,気象庁一元化震源,震度計データ等を使用させて頂きました.記して感謝致します.>