日本地震学会2021年度秋季大会

講演情報

B会場

一般セッション » S08. 地震発生の物理

AM-2

2021年10月16日(土) 11:00 〜 12:15 B会場 (B会場)

座長:吉田 圭佑(東北大学)、直井 誠(京都大学防災研究所)

11:00 〜 11:15

[S08-18] 動的破壊モデルから考察する複雑な断層形状がもたらす条線への影響

〇青木 拓実1、金子 善宏1、Kearse Jesse2 (1.京都大学、2.Victoria University of Wellington)

地震の強震動分布を決定する要因の1つである地震の破壊伝播方向を、古地震に対して求めることは重要な課題である。近年、過去の地震で観測された条線と単純な平面断層での動的破壊モデルによって、地震時に断層面上に記録される条線の湾曲と破壊伝播方向との間の関係性が示され(Kearse et al., 2019; Kearse and Kaneko, 2020)、地質的観察から破壊伝播方向を推定できる可能性が提示された。一方で複雑な断層面で記録された条線には、この関係性と湾曲の凹凸が逆向きになっているものも報告されている。このような湾曲が逆向きになっている条線を説明するため、本研究では地表付近に形状を与えた断層や複雑な形状を持つ断層モデルを用いて地震破壊のシミュレーションを行った。その結果、平面断層の場合と逆向きの凹凸を持つ条線が得られた。これは断層に形状を与えることで断層面上の初期応力が変化し、特にその鉛直成分の変化によって逆向きの湾曲が得られたと考えられる。また本研究では、特に初期応力が深さとともに増加するようなモデルでは地表面近くで逆向きの湾曲が得られるようなパラメータ範囲が狭く、地表付近で湾曲の向きを逆にすることが難しいことも分かった。本研究の結果から、複雑な断層形状を持つ地点での条線の解釈には地形の影響を考慮する必要があり、条線の湾曲から破壊伝播方向を推定する際には断層形状が単純な地点での観察を用いるべきであると考えられる。