4:30 PM - 4:45 PM
[S03-04] Sentinel-1 SAR observation at the northern Noto peninsula associated with active scismicity since the end of 2020
2020年末頃より、能登半島北部の珠洲市近郊にて地震活動の活発化が確認されている。また、地震活動の活発化と同時期より、国土地理院のGNSS連続観測網GEONETによって地震発生域周辺の観測点で局所的な地表面変位が始まったことが報告されている。西村ほか(2022, 日本地球惑星科学連合大会)はこれらGEONET観測データに加え臨時GNSS観測データを解析し、球状圧力源の膨張により地表面変位を説明できるとしている。しかしながら、GNSS観測は検出精度および時間分解能に優れているものの空間分解能は観測点密度に依存しており、本事例における地表面変位の空間的な詳細は明らかではない。本研究では高空間分解能に地表面変位を検出可能なSAR時系列解析を実施し、能登半島北部での地表面変位の空間的詳細を明らかにするとともに、その結果に基づいて地表面変位の変動源について推定も行なったので、それら結果を報告する。
SAR時系列解析には、C-バンドSARのSentinel-1データを用い、ISCE ver.2ソフトウェアにより干渉解析を実施、得られたSAR干渉画像から時系列解析ソフトウェアLiCSBASにより面的地表面変位の時系列を推定した。C-バンドSARは植生等の影響による干渉性の低下が著しいため、マルチルッキング処理およびスペクトルフィルターを適用して干渉性を向上させている。上記SAR時系列解析を2つの異なる観測方向データに適用することで、2方向について地表面変位速度を求めた。なおSAR時系列解析で用いたSentinel-1Aおよび1BのうちSentinel-1Bについては2021年12月の観測を最後にセンサートラブルにより観測が停止しているため、本研究では2つの観測方向情報が利用可能な2021年12月までのSARデータで時系列解析を実施した。地表面変位画像を解釈しやすくするため、SAR時系列解析で得られた推定変位速度は2.5次元解析により準東西成分と準上下成分に投影した。SAR時系列解析で得られた変位速度の妥当性を検証するため、GEONETのF5解日座標値データを用いた。その際、変位の基準点として珠洲市より西方に位置し本事例による地殻変動の直接的影響が無いとみられる穴水(020972)を設定した。地表面変位の変動源推定には、Fukuda and Johnson(2008, GJI)のFully Bayesian Inversionを用い、SAR時系列解析の変位速度およびGEONETの変位速度を入力としたJoint inversionを実施した。変動源の候補として、本研究では反無限弾性体矩形断層モデルおよび球状圧力源モデルの2つを用いた。
SAR時系列解析および2.5次元解析の結果、珠洲市近郊で顕著な隆起およびその周辺で東西方向に拡大するパターンの変位空間分布が得られた。衛星SAR観測は南北方向の変位に感度が無いものの、東西方向および鉛直方向の推定変位速度については、GEONETで得られた変位速度と時間・空間ともに調和的なパターンが得られている。このSAR変位速度とGNSSの変位速度に対しInversion解析を実施した結果、矩形断層モデルと球状圧力源モデルのいずれでも同程度に地表面変位を説明できるモデルパラメータが推定された。観測変位とモデル変位のRMSEを比較したところ、球状圧力源モデルの方がわずかに良い結果が得られ、西村ほか(2022)の結果を支持する結果となった。ただし矩形断層モデルと球状圧力源モデルのいずれにおいても、SAR変位速度に対して4, 5mm程度のRMSE推定残差が見られていること、またGNSS観測点能都(960574)での1cm程度の南向きの変位を全く説明できていないことから、単一の矩形断層および単一の球状圧力源のみでは、InSAR観測とGNSS観測の両方を十分に説明することはできていないことが示唆される。
本研究はJSPS科研費JP22K19949の助成を受けたものです。
SAR時系列解析には、C-バンドSARのSentinel-1データを用い、ISCE ver.2ソフトウェアにより干渉解析を実施、得られたSAR干渉画像から時系列解析ソフトウェアLiCSBASにより面的地表面変位の時系列を推定した。C-バンドSARは植生等の影響による干渉性の低下が著しいため、マルチルッキング処理およびスペクトルフィルターを適用して干渉性を向上させている。上記SAR時系列解析を2つの異なる観測方向データに適用することで、2方向について地表面変位速度を求めた。なおSAR時系列解析で用いたSentinel-1Aおよび1BのうちSentinel-1Bについては2021年12月の観測を最後にセンサートラブルにより観測が停止しているため、本研究では2つの観測方向情報が利用可能な2021年12月までのSARデータで時系列解析を実施した。地表面変位画像を解釈しやすくするため、SAR時系列解析で得られた推定変位速度は2.5次元解析により準東西成分と準上下成分に投影した。SAR時系列解析で得られた変位速度の妥当性を検証するため、GEONETのF5解日座標値データを用いた。その際、変位の基準点として珠洲市より西方に位置し本事例による地殻変動の直接的影響が無いとみられる穴水(020972)を設定した。地表面変位の変動源推定には、Fukuda and Johnson(2008, GJI)のFully Bayesian Inversionを用い、SAR時系列解析の変位速度およびGEONETの変位速度を入力としたJoint inversionを実施した。変動源の候補として、本研究では反無限弾性体矩形断層モデルおよび球状圧力源モデルの2つを用いた。
SAR時系列解析および2.5次元解析の結果、珠洲市近郊で顕著な隆起およびその周辺で東西方向に拡大するパターンの変位空間分布が得られた。衛星SAR観測は南北方向の変位に感度が無いものの、東西方向および鉛直方向の推定変位速度については、GEONETで得られた変位速度と時間・空間ともに調和的なパターンが得られている。このSAR変位速度とGNSSの変位速度に対しInversion解析を実施した結果、矩形断層モデルと球状圧力源モデルのいずれでも同程度に地表面変位を説明できるモデルパラメータが推定された。観測変位とモデル変位のRMSEを比較したところ、球状圧力源モデルの方がわずかに良い結果が得られ、西村ほか(2022)の結果を支持する結果となった。ただし矩形断層モデルと球状圧力源モデルのいずれにおいても、SAR変位速度に対して4, 5mm程度のRMSE推定残差が見られていること、またGNSS観測点能都(960574)での1cm程度の南向きの変位を全く説明できていないことから、単一の矩形断層および単一の球状圧力源のみでは、InSAR観測とGNSS観測の両方を十分に説明することはできていないことが示唆される。
本研究はJSPS科研費JP22K19949の助成を受けたものです。