日本地震学会2022年度秋季大会

講演情報

ポスター会場(2日目)

一般セッション » S04. テクトニクス

[S04P] AM-P

2022年10月25日(火) 09:30 〜 12:00 P-1会場 (10階(1010〜1070会議室))

09:30 〜 12:00

[S04P-02] 関東地方下深部太平洋スラブ内の低速度異常

*宮崎 一希1、中島 淳一1 (1. 東京工業大学理学院地球惑星科学系)

近畿地方から関東地方にかけての東日本を対象に地震波走時トモグラフィー(Zhao et al., 1992, JGR)を行ったところ、関東地方直下の太平洋スラブ内部に地震波速度が低速となる領域が存在することがわかった。そこで太平洋スラブ内部の速度構造をよりよく調べるため、気象庁で観測された太平洋スラブ内地震について次のような解析を行った。(1)ある観測点で観測されたあるスラブ内地震について理論波線を計算する。(2)波線上に別のスラブ内地震が存在する場合、それら2つのスラブ内地震を1つのペアとする。(3)これらの地震のペアについて震源間の距離を観測走時差で割ることで2つの地震間の地震波平均速度を計算する。(4)この操作を観測されたすべてのスラブ内地震について行う。 以上の操作を関東・東北地方の太平洋側に設置された観測点全てについて行うことで、太平洋スラブ内部の地震波速度を詳細に求めた。

解析の結果、関東地方直下の太平洋スラブ内部における地震波速度は中部地方や東北地方直下のものと比べて低速であることが明らかになった。これはトモグラフィーで得られた結果と整合的である。 関東地方は東北日本弧と伊豆―小笠原弧が会合する場所に位置しており、直下の太平洋スラブは尾根のように西側に突き出した形状をしていることが知られている。こうした太平洋スラブのジオメトリが本研究で明らかになった低速度領域の成因である可能性がある。また、関東地方直下には第一鹿島海山に代表されるような海山が沈み込んでおり、こうした地形の名残が低速度としてイメージされているかもしれない。

講演までに、同様の解析を北海道の島弧会合部にも適応する。加えて、関東地方下の低速度領域を通過する波線に対して地震波スペクトル比法を適応することで、同領域の減衰構造も推定し、太平洋スラブ内の異常構造の原因を考察する予定である。