9:30 AM - 12:00 PM
[S09P-05] Inter-plate aseismic slip associated with large earthquakes after 2021 around the source region of the 2011 Tohoku-Oki earthquake
2021年から2022年にかけて、2011年東北地方太平洋沖地震の震源域周辺では、M6からM7クラスのプレート間地震およびスラブ内地震が複数発生した。これらのうちの6つの地震は、宮城県沖から福島県沖にかけた比較的狭い範囲に集中している。そこで本研究では、ほぼ同じ場所で繰り返し発生している小繰り返し地震活動を用いて、これらの地震によって生じたプレート間非地震性すべりの時空間変化を調査した。
小繰り返し地震は、日本列島に展開されている地震観測網で得られた地震波形の相互相関係数とS-P到達時刻差を基に抽出した。本研究では、既に報告している2019年までに発生した小繰り返し地震カタログに、2022年3月16日のM7.4福島県沖地震発生直後まで解析を進めた結果を加えて使用した。小繰り返し地震の再来間隔は、大規模な非地震性すべりが生じていない時期には数年程度となる。そのため小規模で短期的なすべり速度変化には応答しない可能性がある。そこで本解析では、繰り返し地震に隣接する地震活動が同一の断層面で発生し、その活動度の変化がすべり速度の時間変化と対応すると仮定して揺らぎを与え、短期間の時空間変化を推定した。
その結果、2021年以降に発生したいずれの大地震発生後においてもプレート間非地震性すべりの加速が見られた。特に、宮城・福島県沖で見られたすべりの時空間変化は、プレート内地震とプレート間地震の発生が、プレート間の非地震性すべりを介して相互に作用したことを示唆していた。まず、2021年2月の福島県沖スラブ内地震の前には、その東側でプレート間非地震すべりがわずかながら生じていた。2月の地震後、震源の南西側ですべりが加速し、その後、北側ですべり速度が増加した。2021年3月の宮城県沖プレート間地震までには、その震源付近まで広がった。3月の地震発生後、5月1日の宮城県沖プレート間地震の震源域を含む地域ですべりが加速した。その後、すべり域はさらに南側に広がり、5月14日の福島県沖プレート間地震の震源付近まで到達した。5月14日の地震後に生じた非地震性すべりは震源域の東側に局在しており、その西側の2022年3月にその西側で発生したスラブ内地震の震央側には広がらなかった。2022年3月のスラブ内地震発生後にはその震源域周辺にプレート間非地震性すべりが広がった。
このように、非地震性すべり域は、次に発生する大地震の震源まで広がっていく傾向が見られた。プレート間のすべりによる応力増加がスラブ内のダウンディップコンプレッション型地震の発生を増加させることは既に指摘されている。本解析の結果は、スラブ内大地震の発生によりプレート間の応力が増加し、非地震性すべりが生じ、また、プレート間地震が非地震性すべりの伝播によって誘発された可能性を示唆している。宮城・福島県沖地域は、プレート境界型地震とスラブ内ダウンディップコンプレッション型地震の両方が多数発生している。そのため、相互作用の影響が顕著に表れたのかもしれない。
2011年東北沖地震後には、その震源域周辺の広範囲で余効すべりが発生している。その積算すべり量は震源の西側に位置する宮城県沖北部で最も大きい。すべり速度は時間とともに減少する傾向は見られるものの、本震発生後11年以上経過した現在においても、プレート間の相対運動よりも速い状態が続いている。2021年の大地震発生後には一時的に再加速した可能性がある。一方、2021年以降に大地震が発生した宮城県沖南部から福島県沖を含むその他の地域では、加速したすべりは数年程度でほぼ収束しており、近年のすべり速度は、相対プレート運動速度よりも小さかった。巨大地震のすべり域に隣接する地域では、次の地震発生に向けた応力蓄積が起きている可能性がある。
今回推定された大地震発生後の非地震性すべりはいずれも短期間で収束しており、その積算すべり量は5-10 cm程度にとどまる。このすべり量は、繰り返し地震で用いられているスケーリング則においてM2.2の地震の再来に伴うすべり量にすぎない。そのため、小繰り返し地震が短期間で再来することは期待できない。微小地震活動と組み合わせた解析が短期的、局所的なすべりの変化を調査する際には重要となるだろう。地震活動解析から非地震性すべりの時空間変化に関する情報を得ることは、将来発生する大地震の発生可能性を推定する手助けとなるかもしれない。
小繰り返し地震は、日本列島に展開されている地震観測網で得られた地震波形の相互相関係数とS-P到達時刻差を基に抽出した。本研究では、既に報告している2019年までに発生した小繰り返し地震カタログに、2022年3月16日のM7.4福島県沖地震発生直後まで解析を進めた結果を加えて使用した。小繰り返し地震の再来間隔は、大規模な非地震性すべりが生じていない時期には数年程度となる。そのため小規模で短期的なすべり速度変化には応答しない可能性がある。そこで本解析では、繰り返し地震に隣接する地震活動が同一の断層面で発生し、その活動度の変化がすべり速度の時間変化と対応すると仮定して揺らぎを与え、短期間の時空間変化を推定した。
その結果、2021年以降に発生したいずれの大地震発生後においてもプレート間非地震性すべりの加速が見られた。特に、宮城・福島県沖で見られたすべりの時空間変化は、プレート内地震とプレート間地震の発生が、プレート間の非地震性すべりを介して相互に作用したことを示唆していた。まず、2021年2月の福島県沖スラブ内地震の前には、その東側でプレート間非地震すべりがわずかながら生じていた。2月の地震後、震源の南西側ですべりが加速し、その後、北側ですべり速度が増加した。2021年3月の宮城県沖プレート間地震までには、その震源付近まで広がった。3月の地震発生後、5月1日の宮城県沖プレート間地震の震源域を含む地域ですべりが加速した。その後、すべり域はさらに南側に広がり、5月14日の福島県沖プレート間地震の震源付近まで到達した。5月14日の地震後に生じた非地震性すべりは震源域の東側に局在しており、その西側の2022年3月にその西側で発生したスラブ内地震の震央側には広がらなかった。2022年3月のスラブ内地震発生後にはその震源域周辺にプレート間非地震性すべりが広がった。
このように、非地震性すべり域は、次に発生する大地震の震源まで広がっていく傾向が見られた。プレート間のすべりによる応力増加がスラブ内のダウンディップコンプレッション型地震の発生を増加させることは既に指摘されている。本解析の結果は、スラブ内大地震の発生によりプレート間の応力が増加し、非地震性すべりが生じ、また、プレート間地震が非地震性すべりの伝播によって誘発された可能性を示唆している。宮城・福島県沖地域は、プレート境界型地震とスラブ内ダウンディップコンプレッション型地震の両方が多数発生している。そのため、相互作用の影響が顕著に表れたのかもしれない。
2011年東北沖地震後には、その震源域周辺の広範囲で余効すべりが発生している。その積算すべり量は震源の西側に位置する宮城県沖北部で最も大きい。すべり速度は時間とともに減少する傾向は見られるものの、本震発生後11年以上経過した現在においても、プレート間の相対運動よりも速い状態が続いている。2021年の大地震発生後には一時的に再加速した可能性がある。一方、2021年以降に大地震が発生した宮城県沖南部から福島県沖を含むその他の地域では、加速したすべりは数年程度でほぼ収束しており、近年のすべり速度は、相対プレート運動速度よりも小さかった。巨大地震のすべり域に隣接する地域では、次の地震発生に向けた応力蓄積が起きている可能性がある。
今回推定された大地震発生後の非地震性すべりはいずれも短期間で収束しており、その積算すべり量は5-10 cm程度にとどまる。このすべり量は、繰り返し地震で用いられているスケーリング則においてM2.2の地震の再来に伴うすべり量にすぎない。そのため、小繰り返し地震が短期間で再来することは期待できない。微小地震活動と組み合わせた解析が短期的、局所的なすべりの変化を調査する際には重要となるだろう。地震活動解析から非地震性すべりの時空間変化に関する情報を得ることは、将来発生する大地震の発生可能性を推定する手助けとなるかもしれない。